「ね、梓。キスして、って言ったら、・・・してくれる?」



久しぶりのデートは俺の部屋。
小さな四角いテーブル越しの彼女は、ほんの少し上目遣いでそう言った。

果たしてそう言われて断れるヤツがいるなら、俺は見てみたい。























彼 女 の ペ ー ス


























野球部の休みは本当に久しぶりだった。
だから俺はせっかくだからどこかへ遊びに出かけようと彼女であるを誘った。
けれども、俺がどこに行きたいかを聴けば、彼女から返ってきた返答は

「梓の部屋でのんびりしたい」

というものだった。
拍子抜けしながらも、の希望なら、と連れてきた俺の部屋。
を家に連れてくるのは初めてじゃないから、両親とも双子の妹とも面識がある。

部屋の本棚の中にあったスポーツ雑誌をパラパラと捲りながら、
と部活の話をしていると、突然そんなことを言い出した。




ごく普通の会話をしていたのに、どこからそんな話にとんだ?

そう思いながら、「まあだし」と思って愛しくなってしまうのは、絶対に言えない。










「あーっと・・・・・・今?」


俺は突然のの申し出に内心、心臓がドキドキとしてしまっていた。
それを悟らせないように、平静を装う。


「今」

ニッコリと笑う
俺はそれに逆らえるはずもない。いや、まず逆らおうとは思わない。



俺はの頬にそっと手を添える。
するとは、目を閉じた。

俺は、そのの表情にばれないようにゴクリとツバを飲み込んだ。
惚れた弱みなのかもしれないけれど、可愛すぎる。
どうしようもないほど、愛しさがあふれてくる。



俺はゆっくりとの唇に自分のそれを重ねた。
付き合い始めてからもう何度もしてきた行為だけれど、いまだに慣れることはない。

やわらかく、少し冷たいの唇。
俺はそれを優しく咬むようにキスをすると、小さなリップノイズと共にゆっくりと離す。



はゆっくりと目を開けると、顔をほんのり赤く染めながら「ヘヘッ」と笑った。





ああもう本当に。
何でこんなにも愛しいんだろう。














「・・・、こっち」

今すぐにでも抱き締めたい衝動に掻き立てられ、俺は自分の隣をポンポンと叩いた。
は嬉しそうにしながら俺の隣に這って来た。
それから、そのまま勢いよく俺の首にしがみついてきた。
その勢いでに押し倒されるような形になる。


「梓ーっ」

「わ、・・・!」


俺はをなんとか受け止める。
とっさにの腰に腕を回すと、腰の弱いは小さく「ひやっ」と腰をひねる。

「・・・く、くすぐったい・・・」

と笑うに、俺もつられて笑顔になる。


「ばーか」

って俺が言えば、は「なんだとぉー!」と俺の脇をくすぐってきた。


「ば、やめっ、重いしっ!」

「彼女に向かって重いとはなんだー!」



くすぐりを止めないに、俺はぐるりと視界を反転させる。
それはつまり、の視界も反転。


「ちょ、何して・・・」

言い終わらないうちにの唇をもう一度塞ぐ。
今度はさっきとは違って、深く深く。


いつもに振り回されてばかりいる俺の、ささやかな仕返し。


薄く開いた唇の中に舌を入れる。
の舌を自分のそれと絡ませたり、歯列をなぞったりしてを堪能する。




「・・・ん、やっ・・・」

「・・・ヤじゃねーだろ」


キスの間にもれたの言葉に、俺は唇を離してニヤリと笑う。



「・・・バカ梓」

顔を赤くしながらも否定しない
俺はもう一度に唇を落とすと、右手をの服の中に入れる。



「ひゃっ・・・」

すると、は小さな悲鳴を上げると身をよじった。



「梓、手、冷たいね・・・」

はそう言うと俺の手を握ってきた。


「ちょっと緊張してる?」

と、は笑みを浮かべながら、俺の右手を両手で包み込み、その手の甲にキスを落とした。
その行為に、俺の顔は一気に熱を持つ。



「・・・梓ちゃんは可愛いねぇ」


ニヤリと笑った



「けど、隣に飛鳥ちゃんも遥ちゃんもいるんだよ」









それはつまり、俺はオアズケを喰らったわけで。




「・・・だから、キスだけでがまんしてね?」



そう言っては俺の頭に手を伸ばし、俺を引き寄せた。
そして、ニコリと笑った後、自らキスをしてきた。
からのキスなんて、滅多になくて、不意打ちを喰らった俺はカッと顔が熱くなる。








「梓、だいすき」

「・・・俺も」








ああ。結局は、彼女のペース。















07/10/14
とにかく、甘くを目指してみました!