「ね、先輩。センパイの愛が欲しい」 「はーい。ここは図書館ですー。黙ろうねー」 ニッコリと笑う先輩に、俺は大きな溜め息をついた。 先 輩 と 俺 。 放課後の図書館。 居るのは、俺と先輩と、生徒が2,3人。 先輩はカウンターにあった本の山を持ち上げる。 そんな細腕で、よくこんなにたくさんの本を持てるものだ。 俺は感心しながら、まだカウンターに残っている本を持ち上げ、先輩の後に続く。 「榛名くん、今日部活は?」 本の背表紙に張られている番号を見ながら、先輩はそれを本棚へと押し込める。 「・・・今日はミーティングだけだったんです」 「へー。そっか。ご苦労ご苦労」 先輩は視線は一度も俺に向けることなく、本棚と本の背表紙をにらめっこ。 俺はまだ本にも勝てないらしい。 「これ、上だから榛名くんお願い」 ポンッと重ねられた数冊の本。 先輩は手際よく、いつの間にやら本の山が消えていた。 「ちょっと動かないでねー」 それから先輩は俺が持っていた本の中から本棚の下に当たる本を抜き出す。 ほんの少し手が触れるだけで、俺の心臓は大きな音を立てた。 「よし」 先輩は数冊取り出し、また本棚にしまっていく。 俺はというと、未だにこの作業になれることができず、かなりの時間がかかる。 イライラしながらも本棚と背表紙を見比べ、間違えないように戻していく。 「榛名くん、終わった?」 「や、まだ・・・この通り・・・」 本当に先輩はこの作業が早い。 いや、先輩はこの作業に限らず委員会の仕事の手際がいい。 何でも「三年目にもなると体が覚えちゃってる」そうだが、それだけじゃないと俺は思う。 先輩はきっと本が大好きなんだろうなって思う。 「しょーがないなー・・・ほい、貸して」 差し出された手に、本を積み重ねる。 俺はそのとき、先輩にばれないようにわざと手を掠めさせる。 ・・・触れるたびに、先輩の体温を感じてるみたいで、俺はドキドキとしてしまうのだ。 先輩は踏み台を使って上の本を片付けている。 いつもなら俺はそのままカウンターに戻るのだけど、 今日は何だか先輩を見ていたくて、俺はその場で先輩を見上げた。 いつもなら先輩を見下ろしているから、見上げていることがとても新鮮だ。 「よしっ・・・あ、榛名くん、居たんだ」 先輩は本を戻しおわすと、振り返り、俺に驚いたようだ。 下から見た先輩のアングルが・・・何て言うか・・・ 俺からしてみれば、殺人的な破壊力だった。 「・・・先輩、エロい」 「はぁあ!?いきなり何言いっ・・・」 突拍子もない俺の言葉に、先輩は驚いて大きな声を出す。 俺はその瞬間に先輩の腕を掴むと、ぐっと自分のほうへ引き寄せた。 「!?」 先輩はぐらりとバランスを崩し、俺の胸の中へ飛び込んできた。 「先輩、ここ図書室ですよ。静かにね」 ニヤリと笑う俺に、 「・・・ちょ、何やってんの・・・!」 と、先輩は顔を赤くしながら言った。 「榛名くん、怪我でもしたらどうすんの・・・!」 「や、平気っす。先輩軽いから」 自分の心配よりも先に、俺の心配をしてくれた先輩に、俺は心の中があたたかくなるのを感じた。 それが嬉しくて、ついつい頬が緩む。 「てゆーか、離しなさい」 先輩は、俺の腕の中にすっぽりと入っている。 真っ赤になったまま、キッと視線を鋭くして俺を見上げている。 あーヤベェ。 先輩、可愛すぎる。 「嫌です」 俺は腕の力を緩めるどころか、むしろ強くしながらそう言った。 「榛名くん!!」 大きな声を出す先輩に、 「先輩、ここ図書館」 と、先ほどと同じセリフを繰り返す。 「・・・あんまり大声出すと、口塞いじゃいますよ?」 ニッコリと笑いながら、先輩にそう言った。 すると先輩は、先ほどから赤かった顔をさらに赤くする。 「ちょ、はーなーれーて!!」 先輩は先ほどと変わらない声の大きさだった。 俺はニヤリと笑うと、心の中で(忠告はしましたからね)と唱えた。 それから俺は、片手はしっかりと先輩の腰を掴み、もう片方の手を先輩の頬に添えた。 「は、榛なっ・・・」 先輩がいい終わらないうちに、そっと先輩の唇に自分のそれを重ねる。 そして、しばらくした後、ゆっくりと唇を離した。 唇が離れた瞬間、先輩が「・・・んっ・・・」なんてすごい色っぽい声を出したものだから、 俺はぐらりと世界が揺れるような感覚に陥った。 先輩の一挙一動が、俺を惑わせる。 完全に唇が離れると、急に先輩がカクンとなった。 「おわっ!?」 俺は慌てて先輩を抱き締めていた腕に力をこめた。 「・・・こ、腰抜けた・・・」 先輩がそう言ったとたん、俺はたまらずギュウっと先輩の肩に顔を埋めた。 「・・・バカ榛名」 先輩は、小さな声でボソッと言った。 「そんなこと言ってると、またキスしちゃいますよ?」 俺が不適に笑いながら言うと、先輩はまたカッと顔を赤くした。 先輩の顔は、茹蛸みたいに真っ赤だった。 けれども、それがまた可愛くて仕方がないのだ。 ・・・ああ、俺、ヤベェかも。 「・・・それより、離して・・・」 先輩がもう一度そう言った。 俺は最後の意地悪。 「・・・先輩の気持ち聞かせてくれたら、離します」 先輩は目を見開いた。 それから、視線を下にずらすと、しばらく黙った後、ポツリと言葉を発した。 「・・・え?」 その声があまりにも小さくて、 俺は聞き間違えなんじゃないかと思ってしまい、首を傾げる。 「・・・榛名くん、ムカつく・・・」 けれども、先輩が次に言った言葉は、さっき発した言葉とは違っていた。 「・・・委員会だって、当番の日は来ないくせにあたしが居る時ばっかり来て・・・ 話し合いのときは寝てばっかりいるし、今だってあたしの気持ちも何にも考えないで・・・ ・・・き、キスとかするしっ・・・」 先輩はそこまで一気に言うと、フゥと小さく息をついた。 そして、視線を俺に戻す。 「だから、ムカつく」 先輩の射抜くような鋭い視線に、俺はガンと頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。 頭の中が真っ白になる。 さっき俺が聴いた言葉は、俺が都合よく思った言葉に過ぎないんだ。 「・・・・・・けど・・・」 間をおいてそう言った先輩の声で、俺はハッと意識を戻す。 「・・・ムカつくけど・・・まんまと榛名くんの虜になってる」 俺の心は、またドキンと大きな音を立てた。 「・・・先輩、それって・・・先輩、俺のこと好きなんですか?」 「・・・〜〜そうだよ」 先輩がそう言うと、俺はすごい勢いで愛しさが込み上げてきて、腕に力を入れた。 「ちょ、言ったら離すって言ったっ」 「そんなこと言われて離せるはずないでしょう」 慌てふためいている先輩なんて構いもしないで、俺は先輩のおでこに口付けた。 「〜〜言うんじゃなかったっ!」 大声で言う先輩に、 「先輩、だからここ図書館」 と、ニッコリ笑って見せた。 「・・・先輩の愛、俺にたくさんくださいね」 「やらん!!」 07/06/06 俺様な榛名を書きたかったんですが・・・ なんだか俺様っぽさがかけてないですね・・・! そして名前変換が少ないorz |