「え、・・・か、海外転勤・・・?」 ニッコリと笑う両親に、あたしはただ驚くしかなかった。 青春の背番号!No.01 夕ご飯を食べ終わり、一家団欒のひと時。 突然真剣な顔をしたお父さんに、「ちょっとそこに座りなさい」と言われ、 テーブルを挟んで両親と向かい合うように座った。 何となく重い雰囲気が漂っていたのだが、 それを打ち破るかのような明るい声のお父さん。 「実は父さん、昇進しちゃったんだ」 「・・・それは、・・・お、おめでとう」 拍子抜けしたあたしは、とりえずお父さんに賛辞の言葉をかけた。 そして、次にお父さんが発したのが、 「ありがとう。それでな、海外転勤が決まったんだ」 という言葉。 驚いたあたしは、やっとのことで冒頭のセリフを述べたわけだ。 「え、だって、西浦に入学する準備、全部整っちゃってるよ・・・?」 そう。 一般入試で無事に西浦高校に合格したあたしは、 入学手続きも終わり、教科書も買い揃え、三日後に入学式を控えていた。 「うん・・・だからな、父さんたちの知り合いにのことを頼んでおいたんだ」 「そうなの!その人たちの結婚式で母さんと父さんは出会ったのよね」 「ああ。そうだったなー・・・懐かしいな」 「ほんと。ついこの間みたいよね」 いきなり脱線して、思い出に浸る両親。 「ちょ、ま、まってよ!」とあたしはそれをさえぎる。 「話が急すぎて、よくわからないんだけど・・・!」 何とか落ち着こうと自分に言い聞かせながら、両親に視線を送る。 「つまりな・・・」と、説明してくれたのはお父さん。 「父さんと母さんで海外に行くから、お前は西浦高校で頑張りなさい」 それでも、いまいちわからない。 という顔をしていると、お母さんが微笑んだ。 「さすがにを一人置いていくのは心もとないからね、」 そこでいったん言葉を切ると、お父さんをチラリと見た後、あたしの手をやさしく包んだ。 「母さんたちの親友の花井さんのお宅にを居候させてもらうことにしたの」 「・・・・・・え・・・」 「花井さん夫妻は、二つ返事で了承してくれたわ」 「まあ、これも社会勉強だと思って頑張れ」 ポン、とあたしの両肩を叩くのはお父さん。 両親共に、今まで見せたことのないような優しい笑顔だった。 「ちょ、ちょっと待ってよ!この家はどうなるの?」 「どうもならんぞ。そう長い転勤でもないからな。空き家にしておく」 「あ、そう・・・」 あまりにも当然のように話す両親たちに、あたしはもう返す言葉が見つからない。 つまり、だ。 両親が海外転勤で海外で二人暮らし。 そしてあたしは日本に残ってその「花井さん夫妻」のところに居候・・・ そして、ここが、その花井さん宅。 入学式を翌日に控えたあたしは、さっそく花井家にやって来た。 (たった1日やそこらで荷物をまとめたあたしは、自分で自分をほめたいと思う) インターンフォンに指を当て、深呼吸を二度してからそれを押した。 ピンポーン、という音の後、少しして現れたのは、おばさんだった。 「・・・こ、こんにちは。です」 おずおずと名乗ると、そのおばさんはすぐに優しい笑顔に変わった。 「まあ、あなたがちゃんね!あがってあがって!」 「・・・あ、ありがとうございます」 通された先は、リビングで、そこには可愛い女の子が二人いた。 「わ、かわいい!双子ですか?」 思わずそう尋ねると、おばさんは頷き、 「飛鳥、遥。話していたちゃんよ。ご挨拶して?」 と、双子の女の子に目配せした。 「飛鳥だよ!よろしくね」 「あ、遥も!よろしくね」 「です。飛鳥ちゃん、遥ちゃん、仲良くしてね」 「「うん!」」 可愛いなぁ、と思いながらニッコリ笑い挨拶をした。 そして、その後すぐにおばあちゃんが顔を出してきて、挨拶をした。 「あとは、梓と父さんなんだけど・・・」 おじさんはお仕事で、夕方あたりに帰ってくるらしい。 となると、残るは『梓』と言う人物のみ。 (名前からして女の子かな?) なんて考えていると、おばさんがにっこりと微笑んだ。 「梓はちゃんと同じ西浦高校に通うのよ」 「え、そうなんですか!」 それはますます会いたい。 「お兄ちゃんなら部屋に居るよー」 と、言ったのは、遥ちゃん。飛鳥ちゃんも隣で頷いている。 「あら、そう」 おばさんは、階段に近づき、二階に向かって 「お兄ちゃんー!ちょっといらっしゃいー!」 と、大声を出した。 「何ー?」 と、遠くから声がする。 (え、も、もしかして・・・) トントンと、階段をゆっくり下りて顔を覗かせたのは、長身な男の子だった。 あたしがポカンと見つめていると、相手も驚いている様子だ。 「え、・・・だ、誰・・・?」 あたしを指差しながら、長身の男の子がおばさんに目をやった。 「ほら、話してたじゃない。さんところのちゃんよ」 「お、女ぁぁあ!?」 長身の男の子は、驚きのあまり一歩後ずさった。 「あら、言ってなかったかしら」 「聞いてない!そういえば名前、はじめて聞いたし!!」 そんな男の子を無視して、おばさんは 「さっき話してた西浦高校へ行く、長男の梓よ」と、笑いかけてくれた。 「はじめまして、です。よろしくね、梓くん」 あたしは頭をぺこっと下げて挨拶をした。 しばらくしても反応がなく、顔を上げると、梓くんは顔を赤くしていた。 「・・・?あ、梓くん・・・?」 あたしが話しかけると、梓くんはハッとした。それからすぐに、 「き、聞いてない!マジありえねぇし!!」 と、言うと、再び二階へと駆け足で戻っていった。 途中で『ドドッ』という音がし、 どうやら急ぎすぎたために階段を軽く踏み外したらしく、 飛鳥ちゃんと遥ちゃんが「お兄ちゃん焦りすぎー」と、のん気に笑っていた。 初っ端から嫌われてしまったのかと思い、不安げにおばさんを見つめると、 「照れてるだけよ。梓ってば」 と、微笑んだ。 飛鳥ちゃんと遥ちゃんもニヤニヤと笑っている。 それから、部屋に通され(梓くんの隣の部屋だった)、 おばさんとおばあちゃんと一緒に夕食を作った。 おじさんも帰ってきて、みんなで夕食。 梓くんは目をあわせてはくれなかったけど、 ほかの家族は皆あったかくて、なんとかやっていけそうな気がした。 07/05/10 はじめてしまいました、おお振り連載・・・! 個人的においしい設定をぎゅっと詰め込みまして。 好き勝手やらせてもらうつもりですので、どうかあたたかい目で見守ってください・・・! |