「あら、梓。おめでとう」 朝、いつものようにおばさんと一緒に朝食の準備をする。 そして、少し遅れて梓があくびをしながらやってくる。 それに気付いたおばさんは、いつもなら「おはよう」と言うところを「おめでとう」。 さらにその後、それぞれ起き出した家族たちも「おめでとう」。 「梓、何かあったの?」 こっそり飛鳥ちゃんと遥ちゃんに聞いてみたところ、 「うん、今日、お兄ちゃんの誕生日なんだ!」 と、元気な返事。 「えぇー!!きいてないよー!!」 青春の背番号!No.05 「?何が、きいてないわけ?」 梓が首をかしげている。 あたしは「な、なんでもない!」と言うと、再びおばさんの手伝いに向かった。 手伝いをしながら、あれこれ考えてみる。 どうしよう、プレゼントなんて何にも用意してない。 梓も梓だ。 昨日の梓はいつもの梓となんら変わったところはなかった。 今日が誕生日なら、前日にそわそわするとかそういうのがあってもいいんじゃないか。 ・・・・・・ほんとにどうしよう。 月末だからお母さんたちから貰っている仕送りが、もう底を突く寸前なのだ。 正直、財布の中身は500円程度しかない。 ・・・プレゼントを買うのは無理。これは来月にでも改めて渡そう。 じゃあ、どうしよう。 あたしに出来るもの・・・あたしに出来ること・・・。 「!」 ピン、と思いついた。 あたしは手伝いを終わらせると、自室へ戻り、机の中を漁った。 確か、糸があったはず。 青と・・・白と・・・うん。これだけあれば足りる。 休み時間も、下手すれば授業中だって作れる。 うん、大丈夫!今日中におわすわ!! あたしは学校へ行くなり、机の上に糸を広げる。 机の隅にこれを貼り付けて、作業を始める。 そう。ミサンガだ。 手だと目立ってしまうから足首あたりにつけられるように。 よっし!がんばれ、!!あたしならできるわ!! あたしは「おっし!」と気合を入れた。 「?気合入れて何作ってんの?」 作業に没頭していると、頭上から声が降ってきた。 「おはよ、泉くん!」 あたしはチラリと一瞬だけ目をそちらに向けて挨拶をする。 けれども、手を休めている時間はない。 あたしは「今日中に作らなきゃいけないの!」とだけ言って手をひたすら動かす。 「ふーん・・・?」 泉くんはそれ以上突っ込んでくることなく、席に着いた。 「いーずみ!」 「・・・なんだよ、田島」 「い、泉くん、お、おは」 「おお三橋。おはよ」 最近、泉くんの周りに集まってくる、田島くんと三橋くん。 いつもならあたしもその会話に混ざったりするんだけど、今日はその時間もない。 ひたすら作業に没頭。 「ー?何してんの〜?」 そんなあたしの様子に気付いたらしく、田島くんが覗き込んできた。 「田島くん、三橋くん、おはよう!これ、今日中に作らなきゃいけないの!」 あたしは元気に返事をすると、再び作業。 それに突っかかってくるのは田島くん。 「何々?彼氏にでもプレゼントするの?」 「まあそんなとこ!」 「ええ!マジ!?って彼氏いたの!?」 「もーどうでもいいでしょ!とりあえずこれ、今日中におわさなきゃいけないの!」 おざなりに田島くんをかわす。 ごめん、と心の中で謝っておく。 授業の合間も、作業。 時々泉くんや田島くん、三橋くん、他友達が「がんばれー」と応援してくれた。 それほど、あたしの目は真剣だったらしい。(後日談) 夕食は、梓の誕生パーティだった。 楽しく話をしながら、梓の誕生日を祝う。 梓は照れながらも、嬉しそうな様子で、あたしも何だか嬉しくなった。 「はい、これプレゼントー!」 と、言う言葉と共に、家族からのプレゼントが渡される。 ・・・かく言うあたしは・・・まだ、完成していなかった。 「梓ー・・・ごめん。用意できなかった」 あたしはしょぼくれていると、おばさんと飛鳥ちゃんと遥ちゃんが 「しょうがないよ!知らなかったんだもんね!」と、慰めてくれた。 梓も、「別にいーよ。気持ちだけで十分だし」と言ってくれた。 けれど、あと少しで完成なんだ。 あたしは後片付けを終えると、またミサンガ作りを再会させた。 今日が終わるまで、あと3時間もある。 部屋に閉じこもり、黙々と続ける。 「で、できた!!」 バッと時計を見る。 11時45分。 「ま、間に合ったぁあ〜!」 あたしはバンザイすると、すぐに自室を出て隣の部屋をノックした。 「梓、起きてる?」 控えめに声をかける。 すると、すぐに扉が開き、梓が顔を出した。 「おー?どうした?」 どうやら勉強をしていたらしく、梓は眼鏡をかけていた。 「梓、眼鏡かけるんだー!なんかいつもと雰囲気違ってかっこいー!」 と、新しい発見。 梓は顔を少し赤らめると、「それより、何の用?」と、言った。 おっと!うっかり本来の目的を忘れるところだった。 あたしは出来たばかりのミサンガを梓に差し出す。 「あのね、梓・・・、これ・・・」 「・・・何、これ?ミサンガ・・・?」 「うん。プレゼント。ちゃんとしたのは来月まで待ってて」 「・・・これ、作ったのか?」 梓はあたしの作ったミサンガをまじまじと見つめながらそう言った。 「うん。ありあわせの糸で作ったんだけどね」 「あ、さ、サンキュ」 「腕だと邪魔になりやすいかなーって思って、足首用」 「・・・ありがとな、大事につける」 梓はそう言いながら、あたしの頭をポンポンと優しく撫でた。 梓の笑顔につられるように、あたしもほっと胸を撫で下ろす。 表情からも、どうやら気に入ってくれているらしいことがわかり、とにかく安心。 「梓もさー、誕生日なら、もっと前日にそわそわするとかして欲しいよ!」 「へ?」 「だって、梓ってば誕生日だなんてそんな素振り全然なかったんだもん」 そしたら、もっと色々と準備できたのに・・・。 あたしがしょぼくれていると、梓はあたしの頭を再び撫でてくれた。 「いいって。これだけでもかなり嬉しい」 「・・・けど、ほとんどタダだし・・・」 「でも、が今日一日俺のこと考えて作ってくれたんだろ?それで十分だし」 梓は優しく、包み込むような笑顔だった。 「梓・・・何か今、梓をぎゅーってしたい気分だよ」 正直にあたしが言うと、梓は撫でていたあたしの頭をペシッと叩いた。 「いたー!」 あたしが頭を抑えると、梓は「いいからもう寝ろ!」と顔を赤くしながら怒鳴った。 チェ、と舌打ちすると、あたしは部屋のドアに手をかける。 「・・・これ、マジありがとな」 部屋に入る直前に聴こえた梓のその声に、 あたしは知らず知らずのうちに頬が緩んでいた。 花井誕生日〜〜!! 場面がポンポン変わってわかりづらくて申し訳ないです・・・ 梓との距離も少しずつ縮まっています^^ これからほんの少し原作の方によりつつ、どうなるかはノープラン(耳タコ)ですが・・・ 他の西浦ーぜたちとも絡ませていきたいなーと思います! |