「ね、!お願い!」




パンッと勢いよく手を合わせて、腰をかがめながら上目遣いにあたしを見る千代。
く、くやしいけど、かわいい。

けれども、ここは心を鬼にしなくては。


「嫌よ。なんだってあたしが野球部の合宿に付き合わなきゃいけないの」


あたしははっきりと言う。
けれども、これくらいでへこたれる千代ではない。
だてにあたしと三年間同じ部活だったわけじゃない。



「だって、、部活やってないでしょ」

「それとこれとは別だよー」

「合宿だけでいいから!」


千代は必死だ。


「私だけだと不安なの!だって、男子ばっかりなんだよ・・・!」

「千代はそれ覚悟でマネジになったんでしょうが」

「そんなこと言わないでー!なら野球のこといろいろ知ってるし頼りになるの」

うるうると瞳を潤ませながら懇願する千代。




、お願い!!」


と、一押し。

ああもう。
あたしはその千代の顔に弱いんだよな。







「・・・わーかった!合宿だけだからね!!」





















青春の背番号!No.06
























「はぁー・・・」

あたしは合宿の準備をしながら大きな溜め息をつく。
だって、千代以外知らない人の中に飛び込むって言うのは結構緊張する。

・・・まあ居候しに花井家に初めて来た時の緊張も相当なものだったけど。



野球部って、誰がいるのかわからないし。

うちのクラスに野球部っていたっけ・・・?
普段、クラスメイトと部活の話なんてあんまりしたことなかったからなぁ。

あれ、そういえば泉くんって野球部だったかな・・・?
となれば、泉くんと仲のいい田島くんと三橋くんあたりもかな・・・?




・・・いいや。
あれこれ考えるのはヤメ!

千代がいるんだから大丈夫。



とりあえず、準備をしなきゃ。
タオルとかどのくらいいるかなー?




「おばさーん!タオルあります?」

「あら、ちゃんも合宿か何か?」


首を傾げるおばさん。
あ・・・。そういえばおばさんに合宿のこと言ってなかった。

よかったー!早めに準備始めて。


「あ、そうなんですよー。友達に頼まれて野球部の合宿にー・・・」

「野球部の合宿がどーしたわけ?」

「わ、梓!」

おばさんに合宿のことを伝えようとしたところに梓が割り込んできた。



「野球部の合宿に手伝い行くことになったの」

と、あたしが言うと、梓は目を見開いて驚いた。

「え、マジ・・・」

「?何で梓が驚いてるの?」

あたしが尋ねると、答えたのは梓ではなくておばさん。

「お兄ちゃんも野球部でしょ」












「えぇー!!」








「・・・知らなかったのかよ」

梓は呆れた、とでも言いたげに溜め息をつく。

そういえば梓が何部かって聞いたことなかった。
あたしってば、梓って背が高いからバスケ部かバレー部だとばかり・・・!
よくよく考えれば、坊主って時点で野球部が浮かんでくるべきだったよね・・・!



、野球部に知り合いいたのか?」

梓の問いに、あたしは千代と同じ中学で一緒にソフトやっていたことを伝えた。


「へー。お前、ソフトやってたんだ」

「まあ」

「高校で続けなかったわけ?」

「うん。何かピンとこなくてねー」

「ふぅん」

「ま、合宿、よろしくね!梓が居ると思えば緊張もちょっと解けたよ」

「そか。ん、頼むな」


梓はそう言ってあたしの頭をポンポンとたたいた。






・・・・・・梓はよくあたしの頭をポンポンってする。

別に嫌なわけじゃない。
なんていうか、むしろ安心する。
梓の大きな、ゴツゴツとしてるけど優しい手があたしを包んでくれて。


・・・けれども同時に、照れる。
心臓が、いつもより早くなる。




ほんのり熱を持った顔を悟られないように、パッと視線を逸らして「タオル〜!」と、
すでにタオルを捜し始めているおばさんの方へ駆け寄った。











それからあっという間に時間は流れ、ついに明日から合宿となる。



合宿前日、野球部の様子を少しでも知りたいと思い、
少しだけ梓の部屋にお邪魔した。

あたしは梓の勉強机の椅子に座り、梓はベッドの上に腰を下ろしている。

「何、緊張してるわけ?」

フフン、と笑う梓。

「・・・そりゃあ。あたしにとっては九割方知らない人なんだし」

あたしは正直に返事をすると、梓はそれもそうだな、と頷いた。

「お前、九組だよなー・・・っと、九組だと・・・」

梓は天井の電気を睨みつけながら、野球部の面子を思い出しているようだ。

「・・・田島、だろ・・・あと泉と、三橋、かな」

「あ、やっぱり泉くんたち野球部か!」

「知ってる?」

「うん。泉くんは隣の席。で、田島くんと三橋くんはよく泉くんに怒られてる」

「・・・目に浮かぶよ、その光景」

右手で顔を隠すようにしながら苦笑する梓。
野球部でも彼らはそうであることを物語っていて、あたしも思わず苦笑した。


「まあ、ホントに緊張する必要ねぇと思うよ」

「だね。あたしも大丈夫な気がしてきた!」

あたしは「よし!明日は早いし、寝るね!」と、立ち上がった。
梓も立ち上がり、ドアの前まで歩みを進める。

あたしが立ち去る寸前、

「んじゃ、また明日な」

と、梓はまたあたしの頭をポンッと軽く叩いた。



すぐに閉じたドア。あたしはそのドアを背中に預け、体重をかけると、
さっき梓に触れられた頭に手をやった。




・・・・・・なんか、やっぱり、・・・あたし、変かも。











07/05/23
そんなわけで、合宿編に突入です^^
原作沿いっぽくみせかけて、結局のところ全然そらせられないと思われます。

サークルの時間を使ってのアプ作業なので、誤字脱字確認は後ほど^^;
報告くださったら嬉しいです〜(え