「いってきまーす」 やってきました、合宿の朝! 気持ちのいい青空!爽やかな風!まさに合宿日和! あたしは集合場所となっている学校までの道のりを梓と一緒に歩いていた。 合宿に何だかんだで胸を弾ませてるあたし。 高校に入ってから初めての外泊だもん。 夜は千代といろんな話をしよーなんて考えていると、自然と頬が緩む。 鼻歌なんかも交えながら歩いていた。 青春の背番号!No.07 「あ」 そんなあたしの様子を笑いながら(というか苦笑しながらとでも言うべきか) 見ていた梓が、急に立ち止まった。 あたしは梓の数歩前でそれに気付き、振り返る。 梓はすぐにまた歩き出し、あたしもまた並んで歩き出す。 「、合宿が始まる前に注意点をいくつか」 「え、なに・・・?」 梓が真面目な顔をして言うものだから、あたしは思わず唾を飲み込んだ。 「まず、俺のことは・・・」 「花井と呼ぶこと!これはもう耳タコだよ」 「そっか。それから、うちに居候してることは言わない方がいいと思う」 「?なんで??」 首を傾げるあたしに、大きな溜め息をつく梓。 「大体わかるだろ。絶対からかわれる」 ピクピクと眉毛を動かしながら、梓は苦笑した。 ああなるほど。 あたしはともかく、梓は絶対にからかわれるよな。 特に、田島くんとかは突っかかってくるに違いない。 「なるほど。わかった」 あたしは大きく二、三度、首を縦に振った。 「ん?そしたらさ、梓もあたしのこと苗字で呼ばなきゃじゃない?」 「ああ。そっか。・・・お前・・・苗字なんだっけ?」 「!」 「おっけ。、な」 「・・・な、なんか新鮮だね・・・」 普通、名前を呼ばれて照れるならあるだろうに、苗字を呼ばれてあたしは何故か頬を染めた。 「そこ、赤くなるとこじゃねぇだろ」 と、面白そうに笑う梓に、あたしは梓の背中を思い切りバシンと叩いた。 「ー!」 学校に着くなり、千代が大きく手を振っていた。 あたしは千代に駆け寄り、「おはよ!」と、声をかける。 他にも泉くんと三橋くん、あと知らない人がちらほら。 千代から話を聞いていた監督さんの姿もある。 「あれ、じゃん」 あたしに気付いた泉くんがトッと寄って来た。 あたしはそれに片手を上げて答えると、 「千代がどーしてもっていうから、 同じ中学のよしみで合宿だけ手伝いすることになったんだー」 と言った。 隣で千代が「ちょ、・・・!」と頬を赤らめている。 「事実でしょ」と返すと、泉くんが「お前ら仲いいんだな。何か意外」と。 「花井とも仲いいんだ?」 と、口を出したのは、見るからに優しそうな男の子。 「あれ・・・?栄口くん?」 「そうだよ。気付くの遅いね」 苦笑している男の子は、同じ中学出身の栄口勇人くんだった。 同じクラスになることはなかったんだけど委員会で一緒になった。 美化委員会とは言う名のお掃除委員会。 あたしはそれの委員長なんかをやっていて、栄口くんは副委員長だった。 「うわー!久しぶり!栄口くんも西浦だったんだ!」 「うん。まあね」 「あz・・・花井とは、入学式の日に迷ってたら助けてもらったんだ」 危うく『梓』と言いそうになったら、ぎろりと鋭い視線を感じ慌てて言い直す。 「へぇー」 どうやらそれに他の人は気づかなかったようで、あたしはほっと息を付くと話題を逸らす。 「結構うちの中学から来てる人いるんだね〜」 「うん。あと阿部も来てるんだよー」 「え・・・」 何気なく振った会話。 阿部、という言葉に、あたしの顔は引きつった。 阿部って、あの阿部なのだろうか。 いやいや。 うちの中学に阿部なんてたくさんいた。 その中の阿部が、あの阿部であるとは限らないじゃないか。 「ちわー」 聞こえた声に、あたしは固まる。 「おー阿部!遅いなんて珍しいな」 「うるせーよ」 だるそうにしながらやって来た阿部は、あの阿部隆也だった。 どうしようと考えるまもなく、ばっちりと目が合う。 「・・・・・・あ・・・・・・?」 阿部は目を大きく見開き、あたしを見る。 「・・・やほ。ひ、久しぶり」 あたしはぎこちなく返事を返すと、何事もなかったかのように千代の傍へ駆け寄った。 けれども内心は、どうしようという気持ちでいっぱいだった。 阿部を見ることが出来ない。 程なくして皆が集まり、あたしは百枝監督から皆に紹介された。 そして、そのまま百枝監督は自分の車で、その外はバスで合宿所まで移動となる。 合宿先へ向かうバス。 あたしは千代の隣を陣取った。 「ちょ、千代!阿部がいるなんてきいてない!!」 あたしは周りに聴こえないぐらいの小声で千代に怒鳴る。 千代は苦笑すると、 「だって、、何もきかなかったし・・・知ってるのかなーって思ってた」 と、言った。 確かにあたしは何もきかなかったさ。 けど、だってまさかあの阿部が こんな野球部の無名校にやってくるなんて思いもしなかったんだ。 「阿部が来るのわかってたら絶対死んでも断ってたのに・・・!」 あたしが顔を軽く青ざめながら言うと、千代は大きな溜め息をひとつ。 「さぁ・・・ずっと避けてばっかじゃダメだって」 そんな千代の言葉に、あたしは言葉を詰まらせる。 「・・・わかってるよ・・・」 しょぼーんとなるあたしの肩を千代はポンポンと叩く。 「やっべ!昨日オナニーするの忘れた!!」 突然聞こえた田島くんの声に、千代は立ち上がると後ろを振り返った。 「え?何か忘れ物??」 千代の耳に入らなくて良かった、と心底思いながら、 ちらりと見える男子たちの焦り様に思わず苦笑してしまうあたし。 わかってはいるのだ。 けれどもあたしは、合宿に阿部も居ると思うと どうしても気分が重くなってしまうのだった。 「「はぁ〜」」 重なった溜め息に、後ろを振り返ると、梓と目が合った。 隣に座っていたはずの阿部が一番後ろの三橋くんの隣へと移動している。 梓は苦笑しながら、声には出さずに自分の隣を指差し、『くる?』と言った。 あたしは頷くと梓の隣の席へと移動する。 もう一ヶ月ぐらい一緒に暮らしていると、梓の隣がとても居心地よく感じてしまうのだ。 すると梓は、さっき阿部としていた会話を話し始めた。 先日、部活の見学に行った際、三橋くんと三打席勝負をした時のことだそうだ。 田島くんとの勝負を避けたことについて、 『俺なら打ち取れると思ったのか?』という梓の問いに対しての阿部の答え。 「阿部のヤツ、フォローするつもりねぇんだもんなぁ」 もう一度溜め息をつく梓。 あたしはそれに苦笑するしかなかった。 「しょうがないよ、阿部はそういうヤツだよ」 ポロリとそう言ってしまった。 「・・・・・・・・・・・・」 梓は黙ったままあたしを見つめている。 「な、なに・・・?」 あたしはドキリとして尋ねる。 「・・・言いたくなかったら別にいいんだけどさ・・・阿部となんかあったわけ?」 ギクッと反応する正直なあたしの体。 「まあ・・・」 曖昧に返事をすると、梓は「ふーん」とだけ言い、それ以上は突っ込んでこなかった。 ああ。早速不安です、合宿。 合宿に突入です^^ 阿部となにかあったようなヒロインちゃんです。 西浦ーぜと絡ませますよー!上手く絡んでくれるといいです(爆) |