夜、練習を終えた俺たちは、近くにある銭湯まで足を運んだ。
大人数での風呂ってのは、割と楽しみだった。

けど、田島とか・・・つか田島なんだけど・・・
あいつが何か仕出かすんじゃねぇかって言う不安はあったけど、それだけだし。



それが、意外な事態になろうとは、思いもしなかった。
























青春の背番号!No.09























「ひゃっほーい!銭湯!」

銭湯に着くなり、田島はガバッと服を脱ぎ捨て、
タオルを右手に持ったまま風呂へ飛び込む。


「田島、他にも客いんだからな!」

俺の注意を一応は聞いたらしく「わかってるって」と答える。
けれども、返事だけで田島はバシャバシャと風呂の中を泳いでいた。


(・・・わかってねぇよなぁ〜)

俺は大きく溜め息をついた。
他の部員たちが「どんまい」と、ポンと肩を叩きながら浴場に入っていく。



俺も送れること数分、浴場の中へと入っていった。



その時、外しておけばよかった。
毎日いつもつけっぱなしだったから、もうつけている感覚すらなかったから。








「あ、花井!その足首のってが作ってたやつじゃねぇ?」


俺が浴場に一歩足を踏み入れるなり、田島が俺の足首を指差して大声を出す。
その声は、浴場によく響いた。

部員たちの視線が俺の足首に集まる。




(やっべ!忘れてた!)

たらり、と冷や汗が垂れた。




「ホントだ。いつだったかがひたすら作ってたのと似てる」

ひょいと顔を覗かせたのは泉だ。
小さな声で三橋も「ほ、ほんとだ・・・」と言っていた。

そうか。こいつらは9組で、しかも泉はの隣の席なんだっけ。
けど、話を聞く限り、はかなり真剣になってこれを作ってくれたみたいだ。
そう思うと、思わず頬が緩みそうになってしまった。

けれども、ここでそんな表情をこいつらに見せるわけにはいかない。
俺は緩みそうになった顔をすぐに引き締めると、とぼける体勢に入る。


が、何・・・」

少しどもってしまったけれど、この程度ならばれてはないだろう。
知らないフリを決め込んだ俺に、田島が

「いーや!絶対の作ったやつだね。間違いない」

と、自信満々にそう言う。
いったい何を根拠にそういうのか、聞く前に田島が再び口を開く。


、彼氏に作るって言ってたから覚えてたんだもんね!」

彼氏、という田島の言葉に周りの部員たちがざわつく。
そして、今まであまり表情を変えていなかった阿部までもがピクリと反応を示した。

(か、彼氏・・・!?)

もちろん俺も、驚きを隠せない。

が彼氏のために作ったって・・・
それを俺にくれたってことは・・・

「俺、かわいーって思ってて、ショックだったからぜってぇ違わねぇ」

田島は自慢げに胸を張っている。

「ばっか、田島。彼氏なんて言ってねぇよ」

田島に言い返したのは、やっぱり泉。

「えー!?そうだったか?」

「彼氏っぽい人、とは言ってたけど・・・かなーりおざなりだったぞ」

「あれー??」


あんなに自信満々だったのに、だんだんと首を傾げる田島。







「どっちにしてもさ、と花井って知り合いなの?」



今まで黙っていた阿部が、口を出した。

「朝も一緒に登校してたしね」

それに口を挟んだのは、水谷。

(・・・余計なことを・・・!)


「え、そうなの」

阿部が目を見開いた。


そしてすぐにその阿部の視線が鋭いものとなって俺を突き刺す。
俺はそれに少したじろいでしまった。

(・・・もしかして、阿部は、のことを・・・)

浮かんできた思考を首を振って消す。

別に俺には関係ない。関係ない。
・・・そう思うほど気になってしまっていることには、わざと気付かないフリをする。



「確かに、仲良さそうな感じするよねー」

「初対面ではないんじゃない?」

「顔見知りレベルって感じでもなさそうだよな」

色々と俺と談義に花を咲かせる部員たち。


それをさえぎったのは、俺ではなくて、栄口。

「入学式の日にが迷ってたら、花井に助けてもらったんだって」



部員たちの視線は、一斉に俺に注がれる。
「どうなの」と、皆が目で訴えている。

視線が痛い。




「それだけだよ!とはただの知り合い!!」


大きな声でそう言うと、他の部員が「なんだ、つまんない」というような溜め息をつく。

「・・・なんだよ、お前ら・・・俺で遊んでるだろ・・・」



「あれ、花井、気付かなかったんだ?」


不敵な笑みを浮かべながら泉がすかさずそう言う。
俺は彼らよりも数倍大きな溜め息をついた。

けれども、これ以上足首のミサンガについては突っ込まれないようで、
俺は溜め息と同時に胸を撫で下ろしていた。














「でさ、結局、花井のミサンガっての?」



それもつかの間。
風呂上り、脱衣所で田島がポンッと手を叩くと、不意にそう聞いてきた。

ドキリと大きくなる俺の心臓。


・・・ここは変にごまかさない方がいいのかもしれない。
なんとかいい言い訳をしなくては。


「・・・そうだよ。お礼に、って貰った」


我ながらいい言い訳だ!
そう思ったのだけれど・・・

「・・・それを大事につけてるってことは少しはに気があるってことなんだろ?」

泉がまた、ニヤリと笑う。


(・・・泉のヤロ・・・!)

俺は泉に軽い殺意を覚えながらも、

「ちげぇよ。せっかく貰ったんだから、つけねぇと悪いだろ」

と、返事を返す。



次に何かを突っ込まれれば終わりだと思った。
けれども、

「・・・なんか、花井らしいね」

と言う栄口のセリフで、これ以上突っ込まれることはなかった。


(ありがとう、栄口・・・!)










07/06/26
合宿のときは銭湯だったということで。
西浦ーぜたちによる主人公と花井談義^^

皆にからかわれる花井が書きたかったんだけど、なー・・・(遠い目)