中学3年生になって、あたしは阿部とは別々のクラスになった。

けれども、たまに教科書やらなにやらを忘れた阿部がそれらをあたしに借りにやって来るし、
あたしも忘れ物をしたら阿部を頼っていた。
そして、ついでに雑談もするから格別淋しいなーと感じるようなことはなかった。


シニアの試合も千代に誘われなくても観に行くようになったし、
時間があえば一緒に帰ることもあった。






だから・・・



「ね、って阿部くんと付き合ってるの?」



そう思われるのは、思えば当然のことだった。
現にあたしは阿部が好きだったし。

けれども、その気持ちを誰かに知られてしまうのがとてつもなく恥ずかしかったのだ。






















青春の背番号!No.12






















きいてきたとは中3で同じクラスになった。
中々気が合って、この子のおかげであたしはクラスに馴染めるようになった。


「や、付き合ってないよ!」

両手を振りながらあたしは否定する。
するとはずいっと身を乗り出し、

「じゃ、は阿部くんのこと好き!?」

と、きいてきた。


「・・・べ、別に・・・友達としては、いいヤツだと思うけど・・・」

あたしは気持ちを悟られないように苦笑する。
すると、は、ちょっと頬を赤らめながら、

「・・・じゃあ、あの、さ・・・」

と、言葉を濁らせた。

「何?」

あたしは首を傾げる。



「えーっと・・・その、あたし・・・阿部くんのこと、好きなんだ・・・」


モジモジとしながらそう言った
ゴン!と頭を木製バッドで殴られたような感覚に陥る。

けれどもあたしは自分の気持ちを正直に言うことができなくて・・・

「そうだったの!」

と驚いてみせると、「協力してくれない?」というに二つ返事で快諾してしまった。

















、英語の教科書貸してくんね?」


ひょっこりと現れた阿部に、あたしはどきりとした。

「あ、ゴメン。あたし今日忘れてきちゃった」

気付かれないように返事を返す。
それからに視線を移すと、「、教科書持ってたよねー?」と言う。
は一瞬目を見開いてから顔をほんのり赤く染めて
「あ、うん!」と、机を漁ると教科書を阿部に差し出した。

あたしはそれから極力阿部とは話をしないように気を付けたし、
事あるごとにと阿部に話すチャンスも与えた。



あたしはあたしなりに必死に恋のキューピットをやった。



・・・そりゃあつらかった。
けど、あたしは自分の恋よりも友達の方が大切だったのだ。
このクラスの中での自分のポジションを守るほうが、あたしにとって重要だった。

とても幼稚で、バカだった。








気付けば阿部と会話をする機会もグッと減った。
中学最後の、夏休み。



阿部から電話があった。
皆で夏祭りに行くから一緒にどうかと言うことだった。

皆いるなら、いいかななんて軽い気持ちで行くことにした。
それに、変に避けるのも不自然だったし。





















浴衣を着て、集合場所に向かう。
皆で夏祭りなんて、楽しいだろうなと考えると、足取りも軽かった。


けれども、待ち合わせ時間を2,3分過ぎているのにもかかわらず、
その場には一人しかいなかった。



「・・・あ、あれ・・・?皆は・・・?」

あたしは一瞬たじろいでしまったが、それを悟られないように尋ねる。
目の前にいるのは、阿部、だけだった。

「・・・ごめん、

阿部はそういった後、あたしの手を取った。

「え?あ、阿部??」

そのまま歩き出す阿部に、あたしは引っ張られるように後に続く。




「ちょ、ど、どうしたの・・・!」

阿部は少し進んだ境内の近くで足を止めた。
阿部の歩幅に合わせていたせいか、あたしは軽く小走りだったため軽く息が乱れている。
相変わらず、手は握られたままだ。


「・・・あ、阿部・・・?」

もう一度あたしが尋ねると、阿部は視線を左にずらし、バツの悪そうな顔をする。

「・・・・・・悪い」

「や、だからいきなり何・・・?」

「・・・嘘、吐いた」

「・・・嘘?」

いきなりでわけもわからず、あたしは首を傾げるしかない。



「・・・夏祭り、ホントは他のヤツ、誘ってねぇんだ」


「・・・え・・・」

「・・・と、どうしても二人で話がしたかったんだよ」


ぎゅうと、阿部の手に力が入る。
逸らしていた視線も、あたしの瞳に戻った。



「・・・、学校じゃ俺のことなんか避けてっし、これしか思いつかなかった」


「ついでにと祭り回ってみたかったし」とボソリと付け足す。
お祭りの騒がしい音が、やけに遠くから聞こえる気がした。
あたしはどう返したらいいのかわからない。

黙ったままいると、不意に阿部が握ったままの手を引っ張った。
あたしはそれにぐらりと体が揺れ、吸い込まれるように阿部の胸の中へ落ちた。

ずっと繋いだままの手が離れ、そして阿部の腕があたしを包んだ。


阿部の心臓の音がすごく近くで聞こえる。










「・・・俺、が好きなんだ・・・」





消え入りそうな、いつもの阿部とはまるで違うその声に、あたしは胸が締め付けられた。

無意識のうちに阿部の背中にまわしそうになった手。
あたしはハッとすると、それを引っ込め、阿部を押し返した。



本当は離したくなんてなかったのに。
本当は、あたしも同じ気持ちだと伝えてしまいたかったのに。



あたしはを傷つけるのが怖くて、あたしが傷つくのが怖くて、
そうすることしか出来なかった。


「・・・ごめん、あたし、阿部は友達としか思えない・・・」


自分の気持ちを押し隠して、溢れそうになる涙を抑えて、あたしはそう言った。



「っ、何でだよ・・・!お前だって・・・」

「阿部ッ!!」


あたしは阿部が言おうとしていたことをさえぎる。
けれども、それは自分の気持ちが阿部の予想通りであることを
間接的に伝えてしまったということだった。

だから、あたしはキッと彼を睨むと、



「それ以上言ったら怒る」




と、これ以上踏み込ませないようにした。



「・・・ゴメン、阿部・・・」


あたしは、それだけ言うと走り出した。







これが、あたしと阿部の中学での最後の会話。
結局、夏祭りなんて楽しめずに、あたしの中学最後の夏休みは勉強漬けで終わりを迎えた。






そして、阿部とが晴れて付き合うことになったと聞いたのは、
その年の秋の出来事だった。


からその言葉を聴いたときは、それは・・・あたしなりにショックだった。
自分から振ったくせに。

けれども、時間が経つごとに、その気持ちも薄くなって・・・
中学を卒業した頃には、もうすっかり阿部への特別な感情っていうのは消えていた。














あたしの、青春の、ほろ苦い1ページ。















07/08/02
過去のお話。後編です。