合宿2日目の夜、何故だか肝試しなんてものをやることになりました。 青春の背番号!No.14 「・・・あたし、嫌なんですけど・・・」 肝試しやるぞー!と、元気にあたしに知らせにやってきたのは田島くんだった。 「なんでー!やろうぜ、絶対おもしろいって!!」 田島くんは目をキラキラと輝かせている。 1日中体を動かしていて、クタクタなはずなのに、その元気は何処からやってくるのだろう。 監督もよく了承したものだ。高校球児の体力、おそるべし・・・! 「や、あたし、ちょっとそういうの苦手なんだよねー・・・」 どうにか逃れられないだろうか。 「女子いねぇと盛りあがんねぇじゃん!」 口を尖らせながら言う田島くん。 「大丈夫だって!あたしがいなくても皆で余裕で盛り上がるよ・・・!」 「だって、しのーかだけ混じっても奇数になんだもん。いいだろ!」 その後も、何とか逃れようとあれやこれや理由を並べてみたものの、 田島くんの前では結局敵わず・・・ 「よーし!んじゃあクジ引こうぜ!」 あたしは肝試しの輪の中に混ざっていた。 嬉々としながらクジの入っている箱をあたしに差し出す田島くん。 あたしは苦笑しながらそれに手を入れた。 ・・・もう諦めるしかないよね。 二人一組らしいから、そんなに怖くないだろうし!! 全員が引き終わると、隣にいた泉くんがひょいっと顔を覗かせた。 「、何番?」 「え、あっと・・・6番」 「うっわ・・・6番ってラストじゃん」 「・・・!!」 「まー、交換はナシ、な」 泉くんはあたしの肩をポンッと叩くと、 同じ番号を持っているらしい巣山くんの傍へ駆け寄っていった。 ちょ、6番は誰だろう・・・! あたしは周りにいる人たちをキョロキョロと見渡す。 ・・・阿部、はもう沖くんの傍にいる・・・ってことは、阿部はない! とりあえず、気まずいのは避けられる。 けど、誰だろう?? 「あれ、こ、・・・じゃねぇ。、6番?」 「あ、花井!うん、そう。花井も6番??」 「おう。よろしくな」 良かったー!梓が一緒なら頼りになるよー!! あたしはホッと胸を撫で下ろしながら、肝試しのコースの説明を聞いた。 そして、続々と出発していくみんな。 最後ってやっぱりヤだなぁ。 ここの場所に取り残されてるだけでも、人が少なくなっていくと怖い。 あたしはぶるっと一回、大きく身震いをした。 「・・・何、って結構怖がりなの?」 その場にあたしと梓だけになると、梓はあたしを名前で呼んだ。 合宿中はなかなか名前で呼ぶ機会がないから、なんだか少しだけ、恥ずかしかった。 梓に名前を呼ばれるのって、こんなに嬉しかったんだっけ? 「実は、ね・・・。梓は、平気・・・?」 「や、俺も得意な方じゃねぇんだけど・・・隣でこんだけびびられるとなぁ」 梓は苦笑しながら、あたしの頭をいつものようにポンポンと撫でてくれた。 それは、あたしにとって落ち着くおまじないみたいなもので、 だけど同時にドキドキと心臓が早くなる。 「・・・うっし。そろそろ時間だから出発すっか」 「・・・う・・・・・・」 「・・・・・・・・・?」 歩き出す梓に、あたしは一瞬動きが止まってしまった。 梓は付いてこないあたしを不思議に思い、振り返る。 あたし、本当にこういうの苦手なんだよ・・・! 梓はそれを感じ取ってくれたらしく、「ん」と言うと、手を差し出した。 「・・・?」 あたしが首を傾げると、梓は、 「・・・手、繋いだ方が和らぐんじゃねぇかなーって思ったんだけど・・・」 と、言った。 そして、だんだん恥ずかしくなったようで小さな声で「嫌ならいいけど・・・」と付け足す。 「や、是非、繋いでください・・・!」 あたしは、首を横に振ると、手を梓の方へ差し出した。 「お、おう」と、梓があたしの手を取る。 梓の手は、やっぱりゴツゴツとしていて、大きくて、 ・・・そんなに暖かいわけではなかったんだけど、あたしの手よりもあったかい。 (・・・あ、あれ・・・?何だかすごいドキドキしてきたんだけど・・・!) 今が夜でよかった、と心底思った。 そりゃあ、怖いけど。あたしの顔は真っ赤だってことが容易に想像できたから。 「なー、ってどんな中学生だった?」 歩きながら、梓がそんなことをきいてきた。 多分、あたしが怖がっているのを気遣って関係ない話をしてくれてるんだと思う。 「んー・・・別に、普通だと思うけど・・・」 あたしはドキドキと音をたてている心臓を悟られないように、答える。 「普通の定義って人によって違うじゃんか」 「あーうん。確かにね」 「しかも、だし。普通とかどんなんかわかんねぇよな」 ハハ、と笑う梓。 あたしは空いている方の手でそんな梓をバシンとたたく。 「ってぇ!」 「自業自得ー」 あたしが笑うと、梓もニッと笑う。 その梓の笑顔に、あたしはまた顔が赤くなった。 ドキドキは治まることを知らないようで、あたしをどんどん襲う。 (・・・な、なんかすごい手に汗かいてきちゃったかも・・・!) 梓、ぬるってしてるのとか嫌そうだよね。 あたしはそう思い、顔を上げると、梓に呼びかけた。 「ね、あたしさ、手に汗かいちゃったから気持ち悪くない? もう平気なってきたから離しても大丈夫だよ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 すると、予想外にも梓は黙り込んでしまった。 「・・・?梓・・・?」 あたしはひょいと梓を覗き込む。 梓は一瞬あたしと目を合わせると、すぐに視線を逸らした。 暗くて、表情がよく見えない。 「・・・は、離したくないんだ、けど・・・」 「・・・え・・・」 思いもよらないその言葉に、あたしはとにかく目を見開くしかない。 「・・・や、だから・・・その・・・」 梓は空いている方の手で自身の頭をガシガシと掻いた。 「・・・気にしねぇから、さ。このままで、いい?」 搾り出したように途切れ途切れにそう言った梓。 握られていた手に、ぎゅっと力が少し加わる。 「・・・う、うん・・・」 暗くて、良かった。 きっと今のあたし、ありえないほど真っ赤だ。 それからのあたしは、肝試しとは別のドキドキのせいで、 怖さを感じることはなかったのだけど、逆に隣の梓の存在が気になって仕方がなかった。 みんなのところに戻る直前、パッと離された手に寂しさを感じたのはあたしだけの秘密。 合宿で何やってんだよ!という突っ込みは無しの方向で。 思いの外積極的な、花井少年。 |