合宿2日目の夜は、田島の発案から肝試しをやることになった。 青春の背番号!No.15 田島の言い出しに、皆が乗っかりだし、そしてモモカンに許可を得た。 ・・・まったく、練習で疲れてるはずだっつーのに元気だよな。 モモカンも、よく了承してくれたもんだ。 俺はそんなに乗り気ではなかったのだけど、田島がを引っ張ってきたのを見つけると、 なんだか急にワクワクとしてきてしまった。 ・・・ゲンキンだよな、俺も。 そして、そんな俺の姿を見たのか、泉と栄口がニヤニヤとしながら俺の傍に寄ってきた。 ・・・この二人も、いつの間に息合ってきたんだよ・・・! 「花井、クジは俺と泉で作ったからさ」 ニッコリと笑う栄口。 「・・・な、何が・・・」 何が言いたいのかわからずに首を傾げれば、泉がドンッと俺の腹を叩いた。 「と一緒回れるように細工したんだよ」 そして、ボソッとそう言う。 カッと顔が赤くなり、思わず二人とは反対の方向に顔を逸らした。 と一緒に回れるのは、そりゃあ嬉しい。けど・・・ 「な、お、お前ら・・・、余計なこと・・・!」 少しして、反論を試みようと視線を二人の方へ戻すと、既に泉の姿はなく。 ちょっと視線を走らせれば、泉はいつの間にやらの隣へ。 「、何番?」 「え、あっと・・・6番」 「うっわ・・・6番ってラストじゃん」 「・・・!!」 「まー。交換はナシ、な」 よりにもよってラストかよ・・・! 俺はと泉の会話を遠くで聞きながら、がっくりとうなだれる。 「ほら、花井もくじ引きなよ」 栄口がポンッと俺の背中を押す。 俺はそれに促され、クジを引きに行った。 俺が引いたクジはやはりと同じ6番。 どんな細工をしたのかと栄口に問えば、そこはニッコリと満面の笑みが返ってくるだけだった。 それから俺は、に不自然に思われないように近づいた。 「あれ、っ、・・・じゃねぇ。、6番?」 あやうく『』と呼びそうになるのを寸前で止める。 「あ、花井!うん、そう。花井も6番??」 俺の呼びかけに、は笑顔で答える。 「おう。よろしくな」 ああヤバイ。 の一挙一動にいちいち心臓がうるさい。 続々と出発していくみんなを見送りながら、俺はチラチラとを見つめていた。 そして、みんなが出発し終えれば、隣のことが大きく身震いしたのがわかった。 「・・・何、って結構怖がりなの?」 周りに誰も居なくなったから、俺はを名前で呼んだ。 名前で呼んだ瞬間、の表情が少し変わったような気がしたのは、 俺の思い込みかもしれない。 「実は、ね・・・。梓は、平気・・・?」 「や、俺も得意な方じゃねぇんだけど・・・隣でこんだけびびられるとなぁ」 なるべく自然になるように、俺はの頭をぼんぼんと撫でた。 それは、いつもにしていた行為だったのだけれど、 なんだかいつもは感じなかった照れくささを感じてしまう。 ・・・ただ一つの感情を自覚してしまっただけで、こんなにも違うものなのだろうか。 「・・・うっし。そろそろ時間だから出発すっか」 俺は、そう言うと、歩き出す。 「・・・う・・・・・・」 しかし、は一歩も歩き出すことなく、そこに立ち止まったままだ。 「・・・・・・・・・?」 見れば、はすごい怖がっているのが伝わってくる。 ・・・肝試し、こんなに嫌だったんだな。 嫌なのに、参加して・・・。 の恐怖を少しでもやわらげてやりたい。 「ん」 俺は、考えるよりもまず先に行動していた。 「・・・?」 首を傾げるに、俺はハッとしてしまった。 「・・・手、繋いだ方が和らぐんじゃねぇかなーって思ったんだけど・・・」 無意識に差し出していた手に、俺はいっきに恥ずかしさが押し寄せる。 「嫌ならいいけど・・・」 と、最後にはずいぶんと弱々しい声になってしまった。 そもそも、と手を繋いで俺は平気なのか!? 悶々と考えていると、それを打ち消したのは、の声だった。 「や、是非、繋いでください・・・!」 「お、おう」 差し出されたの手を取る。 初めて繋いだの手は、少しだけひんやりとしていた。 (・・・手、ちっせぇ・・・) の手は、・・・そりゃあ当たり前だけれども俺とは違って小さくて。 ソフトをやっていたと言っていたからちょっとゴツゴツとしていたけど、それすら愛しくて。 (・・・・・・お、俺、マジヤベェ・・・) 今が夜でよかった、と心底思った。 だって、俺の顔が真っ赤だということが安易に想像できる。 「なー、ってどんな中学生だった?」 なるべくに恐怖を感じさせないように、俺は会話を振った。 ・・・まあ、がどんな中学生だったのかは大いに興味あるけれど。 「んー・・・別に、普通だと思うけど・・・」 「普通の定義って人によって違うじゃんか」 「あーうん。確かにね」 「しかも、だし。普通とかどんなんかわかんねぇよな」 俺が明るく笑い飛ばせば、は空いている方の手で俺をバシンと叩いた。 「ってぇ!」 「自業自得ー」 ニッと笑うにつられるように、俺も笑顔になった。 が表情を変えるたびに、俺の心臓はうるさく音をたてる。 (・・・ヤベ・・・手、汗かいてきた・・・) どうしたらいいか悩んでいたら、 「ね、あたしさ、手に汗かいちゃったから気持ち悪くない? もう平気なってきたから離しても大丈夫だよ!」 と、が言ってきた。 そっか。も俺と手を繋いでいて、少しは緊張してくれているのかも。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 離したくない、けれどもそれを言葉にしていいものか、俺はまた悩む。 「・・・?梓・・・?」 ひょいとが俺を覗き込んだ。 俺は、を一瞬見ると、すぐに視線をそらした。 そして俺は、覚悟を決める。 「・・・は、離したくないんだ、けど・・・」 「・・・え・・・」 極度の恥ずかしさで、俺はの顔を見ることが出来ない。 がどんな表情なのかを見ることが、少し、怖い。 「・・・や、だから・・・その・・・」 俺は空いている方の手で自分の頭をガシガシと掻いた。 「・・・気にしねぇから、さ。このままで、いい?」 震える声を、絞り出す。 ・・・拒否られたら、こ、怖ぇ・・・ 握っている手に、ぎゅっと力を少し込める。 「・・・う、うん・・・」 聞こえてきた声に、俺は心底ほっとした。 とにかくほっとしてしまい、俺はこれ以上ゴチャゴチャ考えるのをやめた。 そんで、変な空気のままにしたくないから、他愛もない雑談を続けた。 そして、みんなのところへ戻る直前、俺はの手を離す。 急にスーッとした手に、寂しさを感じたのは、俺にとっては当然のこと。 離したばかりで、また繋いでいたい。 ・・・・・・やっぱ俺、が好きなんだなぁ。 合宿で何やってんだよ!という突っ込みは無しの方向で。(二回目) 花井少年視点でお届けして見ました。 |