あたしは山本武というヤツの幼馴染を物心ついたときからやっていて、
それがあたしのポジションなんだとずっと信じていた。






















ポ ジ シ ョ ン は 、 一 番 、 隣 、 幼 馴 染



















「武ー、教科書返すの忘れてたー」


竹寿司の二階、武の部屋にずかずかと入り込むあたし。
右手には、今日学校で借りた数学の教科書。

ちなみに、おじさんにはちゃんと挨拶しているから不法侵入ってわけではない。
まぁ、日常茶飯事みたいなもので、
今日みたいにあたしが武の部屋に行くこともあれば、
武があたしの部屋に来ることもある。

「あーなんだ、別にいいのによ」

武はベッドに腰をかけ、野球の雑誌を広げていた。

「よくないでしょ。明日、小テストあるんでしょ?」

「げ。知ってたのか」

「ツナくんから聞いた」

あたしは言いながら近くの机に教科書を置くと、武の隣に腰を下ろした。
このまま30分ぐらい話をして帰るのが、いつものパターンだ。

最近の話題は、専らツナくんとか獄寺くんのこと。
あたしも武つながりで特にツナくんとは話すようになった。


二人共通の友人で、知らぬ間にツナくんの話になってることとか、たまにある。
今日も流れで、ツナくんの話。


「ツナくんってさ、いい人だよねー。武の自殺も止めてくれたし」

「・・・・・・・・・」

「武?」


あれ・・・何かまずいこと言った?自殺事件はやっぱりまだ禁句・・・?
いつもなら「だよな」とか「でもアイツは〜」とかいう返事が返ってくるはず。
流れる空気の微妙な変化に気づくのも、長年の幼馴染のせいかな。


「武ー?」

あたしは武の顔を覗き込んだ。武の顔からは、いつもの笑顔が消えている。

(あたし、本気で怒らせるようなこと言ったの?)

いつもと違う様子の武に、あたしは明らかに動揺してる。





「わり、。俺、限界」


「は?」



武が言うや否や、世界がひっくり返った。











「・・・何、してんの」

やっと、絞り出た声。
聞かなくてもこの状況がどんなものかはわかる。

でも言葉がそれしか出てこなかった。


あたしは武をにらみつけた。

「どいて。手、痛い」

けれども武は、力を抜くどころか、
逆にさっきよりもきつくあたしの腕を掴んでいる。
状況は、何も変わらないまま。

あたしの両手は武の手できつく押さえつけられ、
あたしは武に押し倒された状態。



「・・・いいかげんにっ!」

『いいかげんにして!』と、あたしが言い終わらないうちに、
武の顔が、ぐいっとあたしに近づいた。
武の唇で、あたしは言葉を最後まで言うことができなかった。

「・・・んっ・・・!」

何度も何度もキスをしてくる武。
あたしは呼吸すら間々ならない状況で、頭の中はぐちゃぐちゃ。


けど、普段の武からは考えられないこの行動に、
あたしは初めて武を『こわい』と思った。


長い長いキスの後、あたしは武の力が一瞬弱まったときに、武の急所(股間)を蹴った。
「っつてぇ!」という武の声が聞こえたけれど、
あたしはそんなの構っていられなくて、急いで武の下から抜け出した。



階段を転びそうなほどの勢いでくだり、
おじさんには挨拶もせずに、あたしは竹寿司を後にした。



自分の部屋に戻り、パタンと扉の閉まる音を自分で確認すると、
あたしは何故か泣いていた。





武がこわかった。


・・・ううん。
それよりも、あたしたちの『幼馴染』という
安心で居心地の良かった関係が崩れてしまったことを感じていたんだと思う。







あたしのポジションは、どこへ消えた?














06/06/20
続くのでしょうか?(しらねぇよ)


続きました(笑)