あの日から、あたしは武と普通に話すことが出来なくなってしまった。 意 識 し た ふ た り 普通に話せない自分が嫌だ。 本当は、もっといっぱい、前みたいに武と話がしたい。 武の部屋へ行って、勉強教えてあげたり、 あたしの部屋に武が居て、今日あったことを何気なく話したり。 ・・・でも、できない。 武の顔を見ると、キスされたことや、抱き締められたことを思い出しちゃうから。 赤くなってる顔を見られるのがすごい恥ずかしくて、つい視線をそらしてしまう。 「よ。」 ・・・そんなあたしの気持ちを知るはずもなく。 嫌がらせのように毎日人の部屋に入り込む武。 そして、ちゃっかりあたしの部屋に腰を下ろす。 「・・・ども・・・」 あたしはどうも武を意識してしまって、視線をそらしてしまう。 ここ最近は、武が一方的に話をして、そして帰っていく。 けど、今日はいつもとは少し違っていた。 「さー・・・いくらなんでも俺のことシカトしすぎ」 武が突然そんなことを言ってきたからだ。 あたしは驚いて、武のほうを見た。 苦笑している武は、どこか切なそうな表情にも見えた。 「もうとって食ったりはしねぇって」 が、すぐにその表情は消えて、いつもの表情に戻った。 ・・・気のせいかなぁ? 「・・・・・・説得力ないけどね・・・」 「うわっ、ひでーなぁ」 武はひととおり笑い終わると、「どれ」と腰を上げた。 いつもより居座る時間が短いなぁ。 まあ、たまにはこんな日があっても良いか。 ドアノブに手をかけると、思い出したようにあたしを振り返った。 「何?」と、あたしが首を傾げると、武は、 「な、。最後にキスして良い?」 なんて言ってきた。 突然何を言い出すのかと思えば・・・! 「は!?な、ダメに決まってるじゃん!!」 あたしは顔を赤くしながら断固拒否した。 武はそんなあたしを見て、「冗談だよ」と笑った。 「・・・じゃーな、」 ほんの少し間をおいて、武はそう言うと、あたしの部屋から去っていった。 それから数日して、あたしはあの日の武の様子がちょっとおかしかったことが、 気のせいではないということに気づいた。 ・・・あの日を境に、武があたしのことを避けているから。 “最後にキスして良い?” そう言った武の言葉には確かに“最後”という言葉があった。 つまり、あの日で最後にするつもりで、あたしの部屋に来たということ? 嫌だと思った。 武と話が出来なくなっちゃうこととか、 ・・・武があたしとは別の女の子と仲良さそうにしているのとか。 武の隣は、あたしの特等席だったのに。 どうしてあたしがそこにいないの? このままじゃ、すごく嫌だったから。 あたしは、久しぶりに武の部屋へ行くことにした。 おじさんに「こんばんは」とあいさつをして、竹寿司の二階へと向かう階段を登る。 ・・・今までならノックもせずに、入っていた武の部屋。 あたしはその扉を前にして、大きく深呼吸すると、コンコンとドアを鳴らした。 「んー?親父ー?何ノックなんかしてんだー?」 武の声が聞こえた。 あたしは、その声を久しぶりに聞いて、胸がきゅうと締め付けられた。 意を決して、ドアを開く。 「・・・こ、こんばんは・・・」 「・・・・・・・・・」 武は、目を見開くと、ベッドの上に寝転がっていた体をガバッと起こした。 「・・・なんか、久しぶりだね・・・。家は隣なのに」 「お、おぅ。どうした、」 武は戸惑いながらもあたしを部屋の中へ招いた。 武の部屋に置いてある小さなテーブル越しに向き合うあたしと武。 あたしは、見慣れていたはずの武の部屋に、何故だかすごく緊張していた。 ・・・武のにおいだと思うと、くらくらとさえする。 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 お互いに無言。 あたしは頭の中が真っ白だった。 しばらく沈黙が続いたが、武がそれを破った。 「あのさ・・・、何もねぇんなら帰ってくんね?」 ゴンと、鈍器で殴られたような衝撃が頭の中を走った。 「・・・あ、うん。・・・・・・帰る」 あたしは何とか笑ってそして武の部屋を後にしようとした。 けど、無意識のうちに涙がでた。 こんな泣いているところなんて見せたくないと思って、 あたしは急いで立ち上がるとドアノブに手をかけた。 ドアを開こうとドアノブを回して手前に引いた瞬間、 ドンッとすごい音でドアがまた閉まった。 びくりとしながら振り向くと、武がドアを開けさせないように両手で押さえていた。 「・・・・・・武・・・?」 あたしが武の名前を呼ぶと、武はあたしを見下ろした。 「・・・なんで、泣いてんだよ・・・」 苦しそうな表情だった。 武はあたしの返答を待つことはしないで、今度はあたしを抱き締めた。 「・・・お前、マジでわけわかんねぇ」 腕にこめられた力は強く、苦しかった。 「・・・あたしだって、わかんないんだよ・・・」 あたしは武の胸に体を預けたまま、呟いた。 涙が止まらない。 「・・・武に避けられるのが嫌。武がほかの女の子と仲良さそうにしているのが嫌」 武に冷たくされるのが、すごい苦しくて悲しい。 「・・・違う・・・。わかんなくない・・・」 ああ。やっとわかった。 この気持ちは―― 「・・・あたし、武が好き」 好き、というんだ。 武は、あたしがそう言い終ると、あたしを抱き締めていた腕の力を弱めた。 そして、あたしの顔を驚きの表情で見つめる。 「・・・俺の聞き間違えじゃない?」 あたしは小さく首を横に振って「ない」と、言った。 武は嬉しそうに笑った。 そして、あたしの涙を拭き取るように顔のあちこちにキスをしてくる。 あたしがくすぐったくて目を閉じると、今度は唇に。 しばらくそうしていて、名残惜しそうに唇を離すと、再び抱き締めてきた。 「・・・もう、に嫌われたと思った」 「・・・それはこっちのセリフだよ・・・急に避けられて・・・」 「うん、ごめんな」 武はあたしの耳元に唇を寄せると、「でも」と続ける。 「俺がを嫌いになるなんてありえねぇから」 かあ、と一気に熱くなる顔。 いくら顔が見えないとはいえ、耳まで真っ赤なら武にもそれは伝わってしまっただろう。 恥ずかしかったけど、それでも武に触れていること、 触れられていることが嬉しくて、あたしは武の背中に腕を回すと、力をこめた。 06/08/30 コメント消しちゃいましたので、また書いてます。 いっぱいいっぱい。なんとか完結です! 山本に耳元でささやかれたら、腰抜けそうです(笑) |