日曜日。

学校も休みで、のんびり出来る日。
あたしはその日、ほんの少しの時間だけ買い物に出かけていた。


・・・まあ簡単に言ってしまえば、お母さんにおつかいを頼まれたわけです。























あ る 日 曜 日 の 過 ご し 方






















「ただいまー・・・」

スーパーの袋を玄関において、靴を脱ぎながらあたしは言った。

けれども返事がなくて、どうしたのだろうと思いながら台所へ向かう。


「ちょっと、お母さん・・・?」

ひょい、と台所を覗き込むと、






「あ、!お帰りなさい」

「よっ」


同時に聞こえてきた声と、見えた姿に、あたしは目を見開いた。




「・・・なんで武が居るわけ?」

そう。
そこにはお母さんと、幼馴染で・・・あたしの彼氏でもある山本武が居た。
しかもお母さんと仲良くエプロンつけて料理なんかしちゃってるんですけど・・・!


「ん。お前に用あって来たら留守だったからさ」

卵をかき混ぜながら武は答える。
留守だったらあなたは料理しちゃうんですか・・・


「さすがお寿司屋さんの息子ね!助かっちゃった!」

お母さんは武を見るとニッコリと笑った。

「・・・・・・・・・」


な、何なんだこの奇妙な光景は。

あたしは言葉が出なかった。
いや、でも母親と彼氏が仲がいいってことは喜ぶべきことなのか・・・?




「武君が息子になってくれたらお母さん嬉しいわ」

るんるん、というのが目に見えてわかるお母さん。
何を言ってるんだか。

あたしは呆れながら、二人のことは放って置こうと、
買ってきた食材を冷蔵庫に詰め始めた。


「ははっ。んじゃあを俺の嫁さんにすればいいじゃないっすか」

「まあ!名案だわ!」


ふーん。あたしをお嫁さんにねぇ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・?


は俺が幸せにしてやりますよ」

「まあ。ふつつかな娘ですけど・・・」




「ちょ、ストーップ!!」

あたしは慌てて二人の会話に割って入った。

「二人して何言ってるわけ!?」

「「何って、今後のこと」」

「いやいや!そこはハモらなくていいから!!」

あたしが力いっぱい否定しても、
お母さんも武も相変わらずマイペースに楽しそうに、
子どもは何人欲しいだとか、一緒に買い物に行きたいだとかそんな話を続けている。


「武!あたしに何か用だったんでしょ!?」

あたしはそんな空気に耐え切れず、
この会話を少しでも早く切り上げさせたくて無理やりに話を逸らす。

「んあ?ああ、そうだった」

「部屋いこっ」

「お、おお」

あたしは武の背中をぐいぐいと押した。



「あなたたち、まだ中学生なんですからね!」

台所を出る寸前、ニヤニヤと笑いながらそう言ったお母さんに、
あたしがカッと顔を赤くさせていると、

「ははっ大丈夫っすよ」

と、武が答えた。












もうこの二人嫌だ・・・









あたしは部屋のドアを閉めると、ぐっと疲れを感じた。


「やっぱのおふくろさんは面白いのな」

「あたしはあなたのほうが面白いと思いますよ、武君・・・」


ベッドに腰掛けている武の隣にあたしも腰を下ろす。

「・・・あたしさ、お母さんに武と付き合ってること言ってなかったんだけど」

「おお。だから俺が言っておいた」

「え」

「・・・とお付き合いさせてもらってます、って」

「は?」

「そしたらすげぇ喜んでた」

「・・・・・・」


最後の沈黙は、溜め息。

ああそうだ。
うちの母親はあたしが武に襲われたこと知らないんだもんな。
いつも笑顔で、気前のいい兄ちゃんぐらいにしか思ってないんだろうな。


「ちなみに、俺の親父にも言ってあるから」

「は!?」

「親父も嬉しがってたぜ」

「んなっ・・・!?」


ど、どうりで・・・
なんだか最近、おじさんの表情がいつもと違うと思ったら・・・
あたしは今更ながら赤面してしまった。


「あ、た、武!それより用事って?」

「んー・・・特にないんだけどな」

「はぁ?」

に会いたかった」

「・・・っ!」


ニッコリと笑う武に、あたしはさらに顔の赤みが増す。

「その笑顔は反則だよ・・・」

あたしがぽつりと呟くと、

「俺はのその顔のほうが反則だと思うけどな」

と、武が言う。
すっと、武の手があたしの頬にのびてきた。

ビクン、とあたしが反応してしまうと、
武は「いい加減慣れろよ」と、また笑った。




そうやって武ばっかり余裕そうに見えるのが何だか悔しくて、
あたしは武の頬に自分の唇をあてた。





「・・・口じゃねぇの・・・?」



けれども、武はいたって普通な感じ。
やっぱり頬じゃダメか・・・。


「・・・・・・目、閉じて・・・」

あたしが言うと、武はすっと目を閉じる。

(うわ・・・きれい・・・)

思ったよりも長いまつげに、整った顔立ち。
あたしはしばらく武の顔に見惚れていた。




「・・・まだ・・・?」

うっすらと目を明けた武にまたドキンとして
「目、閉じて!」と、さっきと同じ言葉を吐いた。



覚悟を決めると、あたしはそっと武の唇に自分のそれをあてた。




そして、すぐに唇を離す。








「・・・・・・、誘ってる?」

武のその言葉に、目を見開くと、

「誘ってない!!」

と、めいっぱい否定する。



「まあ、おばさんに『大丈夫』なんて言っちまったからな」

武はあたしの頭をポンポンと叩いた。


「それに、もまだ慣れねぇし」

「・・・・・・すみませんねぇ」

「いや、かわいい」

「・・・・・・・・・」

「今はまだ今のままでいっかな」


武はそう言って、あたしに口付けた。



・・・さ、さっきから何なの・・・
あたしの心臓が持たないよ・・・





あたしはそんな心臓の音を自分で感じながら、
きゅっとベッドのシーツを握り締めた。


武には叶わないなーなんてちょっと悔しく思いながら、
あたしは疲れたけど、とても幸せな日曜日を過ごしたのでした。




(武が帰ったら、お母さんに絶対色々聞かれる・・・!)










07/02/04
気分で続きを書いてしまいました・・・。
いつの間にやらシリーズ化ww

書いているのがとても恥ずかしかったです・・・(笑)
この恥ずかしさを乗り越えて、私は成長してゆくのですね。(何)