『あの山本武が学校を休んだ』という噂は、 すぐに隣のあたしのクラスにまで届いた。 そして休み時間にちょろりと武の教室を覗けば、やはり本人の姿はなく。 甘 え た が り な 季 節 「ツナくーん」 あたしは教室の入り口でツナ君においでおいでと手招きをした。 それに気づいたツナ君は「ちゃん!」というとあたしの方へ小走りにやって来た。 「武、学校来てないの?」 「あ、うん。先生が風邪で休みだって」 「・・・あの武が・・・」 あたしは、目を見開いて驚いた。 だって、あの武が・・・ 健康だけがとりえみたいな、あの武だよ!? 「うん・・・」 そんなあたしの様子に、ツナ君は苦笑しながら頷いた。 「ちゃん、朝は一緒じゃないんだもんね」 「うん。だって野球部の朝練、早すぎだもん」 「確かに・・・」 ツナ君はまた苦笑すると、 「帰りにでも山本の様子見に行こうと思うんだけど・・・」 一緒にどう?とでも言いたげにあたしの顔を覗き込んできた。 「あ、うん。んじゃあたしも一緒にいこっかな」 あたしは当然断る理由もない。 それどころか、いつかの日曜日に武があたしと付き合ってることを おじさんに言ったということを知ってから どうも武の家に一人で行くのが気まずくて行ってなかった。 ・・・だから、ツナ君の誘いは本気でありがたい。 「帰りにコンビニかスーパーでなんか買っていこ」 あたしが言うと、ツナくんは「そうだね!」とニッコリ笑った。 そんなわけで、放課後。 あたしとツナ君は、武の家へお見舞いへ行くことになった。 「ね、山本に何買っていこっか?」 「う〜〜ん・・・そうだなぁ・・・」 近所のスーパーであたしたちは品物たちとにらめっこしていたのだが、 ぎゃーぎゃーと言い合いながら、結局『牛乳プリン』で落ち着いた。 我ながら(といってもコレを最初に言ったのはツナ君だけど)ナイスだ。 そして、あたしたちは武の家へとやって来た。 「おじさん、こんにちはー。武、生きてますかー?」 あたしが先陣切ってやってくると、おじさんは威勢よく「おう!」と言った。 「よく来たな!武の野郎、部屋で寝てるから顔出していってくれ」 「はーい」 階段をのぼって、ちょっと行ったところを右が武の部屋だ。 あたしは一応ノックをした。 けれども、返事を待たずに勝手にドアを開けた。 後ろから、ツナ君も続く。 「武ー・・・」 と、ベッドを覗き込むと、武は丁度寝ていた。 「山本、寝ちゃってるんだね」 「そうみたい・・・」 ツナ君もあたしと同じく武の顔を覗き込んだ。 「どうしよっか、起こさないうちに帰っちゃった方がいいかな・・・」 ツナ君が『うーん』と小さくうなりながらそう言う。 「いや、でも武はツナ君の顔見たいと思うなぁー」 ベッドを覗き込んだまま、小声で会話をしていると、 「ん・・・」と、武がモゾリと動いた。 ビクリ、とあたしたちは驚いた。 すぐに、武の目が薄く開かれ、 「んー・・・・・・?」 と、あたしの名前を呼んだ。 だからあたしは「なぁに、武?」と、その呼びかけに答えた。 すると、ベッドから武の手があたしへと伸びてきて、 「ふぎゃ!」 その手はあたしを捕らえ、あたしは武の胸へと引っ張られた。 「た、武!何寝ぼけてん・・・」 いい終わらないうちに、武はあたしの唇に、自分のそれを押し付ける。 「!!」 な、何考えてんの!? 後ろにツナ君いるんだよ!? あたしは(病気だとかそんなの構ってる余裕もなく) 武の胸をどんどんと叩いて、必死に抵抗した。 「んあ・・・、・・・」 しばらくして、やっと武の唇が離れる。 あたしがハアハアと肩で息していることなんか構いもせず、 武はのそのそと起き上がった。 「・・・信じらんない・・・」 あたしは脱力。 ちらりとツナ君を盗み見れば、顔が真っ赤。 ・・・は、恥ずかしいなんてレベルじゃない・・・。 「・・・あ、や、山本、元気そうだね!」 あたしが恥ずかしさに小さくなっていると、ツナ君がハッとしてそう言った。 「ん。なんか寝たらだいぶスッキリしたぜ」 「そ、そっか!んじゃあ俺、帰るよ!」 「なんだよ、来たばっかりじゃねぇの?ゆっくりしていけよ」 「いや!いいよ!元気なら!!」 ぶんぶんと手を振り、ツナ君は「じゃあ!」と、そそくさと帰っていった。 残されたあたしと武。 武はいつもとかわらずだけれど、あたしは言いようのない恥ずかしさでいっぱい。 「・・・うぅ・・・ツナ君ともう顔合わせられない・・・」 「?なんでだ??」 「武がキスしたからでしょ!?」 あたしが顔を真っ赤にしていると、「あー悪い悪い」と、武は笑った。 「ずっとにキスしてぇなーって思ってたら本人が居たから、つい」 「つい、じゃない!」 (意識あったのかよ!) はあ、とあたしが溜め息をついていると、武はちょいちょいとあたしを手招きした。 「・・・ー・・・」 「何よ」 「・・・もいっかい」 「・・・・・・・・・・・・しょうがない・・・」 しばらく考えた後、あたしは武に優しく口付けた。 風邪を引いて熱を出すと、人が恋しくなるって言うけれど、武もそうらしい。 ・・・まあ武は普段から・・・なんというか、そんなんだけど。 「・・・ー・・・」 「・・・何、」 「もっとー・・・」 「調子乗るな」 あたしはビシッと武のおでこに軽くデコピンをする。 と、そのときに、武の顔がまだまだ熱いことに気づいた。 「もう少し寝たら?」 あたしの提案に、武は「ん」とおとなしく従う。 「じゃあ、あたし帰るね」 あたしは立ち上がり、帰り支度を始めようとするが、 武があたしの制服の端を掴み、それを阻止した。 「・・・武ー・・・?」 「もう少し、居て」 「・・・しょうがないなー・・・」 とても甘えんぼな武に、あたしはもう一度腰を下ろした。 さらり、と頭が撫でられるような感覚で、あたはハッとした。 「やばっ!!」 ガバッと顔を上げると、ニッコリと笑顔の武が目に入った。 「・・・寝ちゃったのか、あたし・・・」 まだ覚醒しきっていない意識と、目を擦っていると、 武があたしの顔を両手で包み込んできた。 そして、また触れる唇。 目蓋に、鼻の頭に、おでこに、あちこちキスが降ってくる。 その唇を通して伝わってくる熱がさっきよりも冷たくて、 武の熱も下がってきていることがわかる。 「・・・武、キス魔だよね・・・」 あたしが苦笑すると、 「・・・にだけだけどな」 と、笑った。 あたしはその後、時計を見て夜の11時を過ぎていたことに気づき、 あわてて階段を駆け下り、おじさんに挨拶をすると、隣にある自分の家へと帰った。 07/02/07 とりあえず、いちゃこらしているところを書きたかったがために出来上がりました。 ・・・ので、ストーリー性があまりないというか。 展開がちょっとひどいのは自覚してます。いつもの無自覚よりはましと思ってくd(ry ちなみに、お見舞いに行くとき、はじめは獄寺君も居ました。 けど、書いていくうちに獄寺君のセリフが全くないことに気づき、消しちゃいました・・・ ごめん、獄寺君・・・! |