あたしの幼馴染は野球バカ。 小さいころから野球野球野球・・・ けれども、楽しそうにしているその姿、カッコイイと思った。 n o t i c e 「!俺、明日試合なんだ」 キラキラと目を輝かせながら、幼馴染の山本武が言った。 「そうなんだ!うん、明日か!暇だから応援行ける!行くね!」 あたしもきっと彼に負けないくらい目を輝かせていたと思う。 「おう!絶対来いよ!絶対勝つからな」 「うん!」 場所は竹寿司一階。時刻は午後七時過ぎ。 あたしの両親は共働きで二人とも帰りが遅いなんていうことは良くあった。 それで、お隣さんである山本家に晩御飯をご馳走になるということももはや日常。 ご飯をご馳走になる代わりに、あたしは竹寿司を良く手伝っていた。 今日も同じであたしは学校が終わり、家に荷物もろもろを置いてくると 竹寿司に出向いて、お手伝いをしていた。 晩御飯はおじさんと二人だけで食べるなんてことも良くあった。 けれど、今日は武の帰りが早い。 何かあるのかなーと思えば、明日試合なのか。 あたしは、武が試合に出ている姿を見るのが、キラキラとしていて大好き。 翌朝。 あたしは武の試合を見るため、並中のグラウンドへやって来た。 練習試合だというのに、ギャラリーが結構いる。 ふと、武があたしに気付いたらしく、大きく手を振った。 あたしはそれに手を振り返すことはしないで、ただ微笑む。 だって、武の人気は痛いくらい知ってるから。 「きゃー!山本君!がんばってー!」 「たけしー!」 ほら、ね。 あたしはこの声援を聞くたびに、ちょっとだけズキンと心が痛む。 その正体が何なのか、あたしにはよくわからない。 試合が始まって、少しした頃、ふとある会話が耳に入った。 いつもなら試合に集中しているんだけど、 その会話の中に「武」という言葉が含まれていて、あたしはそれに反応してしまった。 ひそひそとした声だったけど、あたしはそちらに何故か聞き耳を立ててしまった。 「あたし、この試合終わったら、武君に告白しようと思ってるんだ」 「うん!いけるよ!那智、かわいいし!」 「えへへ・・・実は、武君にも可愛いって言われたことあるんだ」 「わ、脈アリじゃん?」 聞かなきゃよかった、と思った頃には遅かった。 ちらりと、その会話をしている人たちを見れば、確かに可愛い女の子。 試合に集中しなきゃって言い聞かせていても、あたしの心はここではないどこかへ。 どうしよう。 けれど、あたしにはどうすることも出来なくて、なんだかここに居たくなくて・・・ ・・・気付けば、自宅の部屋のベッドの上。 どうしちゃったんだ、あたし。 ベッドの上で、目を閉じる。 けれども、眠気は全くやってこない。 目を閉じれば、そのまぶたの裏に武の顔がこびりついているかのように、 彼の顔が浮かんできた。 もやもやとする気持ち。ほんとうに、何が何だかわからない。 どのくらい時間が経ったのだろうか。 ピンポーン、と、呼び鈴が鳴った。 いつの間にかあたりは暗く、しんとしていて、 その呼び鈴の音が、静かに闇の中に溶け込んでいくように聴こえてきた。 それが武だろうことはすぐにわかった。 だから、あたしはその呼び鈴に答えない。 ・・・今は、武に会いたくなかったから。 (ごめん、武・・・) あたしは心の中で謝ると、布団を頭からかぶった。 ドンッ! 少しして、大きな物音がした。 ビクリと、飛び起きると、すぐに勢いよく部屋のドアが開かれる。 「!なんで途中で帰ったんだよ」 会いたくなかった本人が、目の前に。 「・・・え、何で居るんですか・・・」 「ん?カギあいてたから入った」 「・・・・・・ソウデスカ・・・」 何であたしってばカギかけるの忘れてたの・・・! 無用心にも程がある・・・! 「それよりも!!」 「・・・んー・・・ちょっと気分悪くなっちゃって。もう平気なんだけど!」 あははと適当に理由を繕うと、武は「そっか」と、安心したように笑った。 「熱はねぇのか?」 「あー・・・うん」 あたしは熱なんて全くないことが自分でも良くわかっていた。 だから、武に何となく申し訳なくて、曖昧に答える。 そしたら、武は、眉を寄せて、 「・・・我慢してんじゃねーだろうな?」 と、あたしの頬に右手を添えると、コツンとおでこをくっつけてきた。 (うわあぁぁああ!!) 至近距離に武の顔で、あたしは顔が一気に熱くなった。 「・・・やっぱ少し熱いな?」 武は、おでこをくっつけたまま、そう言った。 十センチも離れていないところで、目が合う。 (誰のせいだと思ってるの!!) あたしは、ドキドキで声を発することも出来ず、なんとか武の肩を押して、それを離した。 「……・・・?」 武が怪訝そうにあたしを覗き込んでくる。 「・・・・・・だ、大丈夫だから・・・」 やっとの思いで、言葉を発した。 あたし、今、絶対顔真っ赤だ。 恥ずかしくて、武に顔が見られないように布団を顔までガバッとかぶった。 あたしは上半身を起こしたままだから、きっと武からは布団の山に見えるんだろうな。 「お、おい、・・・!」 「ほんと平気だから!!もー帰って!」 「・・・・・・・・・・・・・・・わかった・・・」 少しの間のあと、武は小さく溜め息をつくと、そう言った。 けれども、そこを動くような気配は全く感じられない。 それでも、数分間しんとしていて、音もなく帰ったのだろうかと思い、 あたしは布団を掴んでいた手の力を弱めると、そっとそこから顔を出す。 それを待ち構えていたかのように、布団はガバリとあたしから引き剥がされる。 「ちょ、武!」 「・・・そんな、のこと、ひとりにできねぇよ」 ニカッと笑う武。 よくも音を全く立てずにそこに居たものだと、あたしは少しばかり感心してしまった。 武はそのまま、あたしのベッドにのそりと上がってきた。 「な、何してるの・・・!」 あたしはすごい勢いで武から距離をとろうとした。 けれども、それはベッドの上。 すぐに壁によって、これ以上身動きが取れなくなる。 かあぁと、ますます赤くなるあたしの顔。 (こんなの、前は全然平気だったのに…!) そうしたら、武の大きな腕が、あたしをしっかりと包み込んだ。 一瞬、何が起こったのかわからなくてポカンとしていた。 「た、武!?」 けれども、すぐにハッとして、あたしは声を出す。 すると、武もハッとした様子で、すぐにあたしから離れた。 「わ、悪ぃ・・・・・・なんか、つい・・・」 バツの悪そうに頭をかく武。あたしに負けず劣らず顔が赤くなっている。 「・・・俺、今日な、クラスの女子に告られたのな…」 少しして、武が口に手を当て、恥ずかしそうにそう言い始めた。 「・・・・・・うん・・・」 あたしは出来ればききたくなかったけれども、 武がどう答えたのかすごく気になっていたから、 武にばれないように小さくこぶしを握って、返事を返した。 「俺、正直好きとか愛してるとか良くわかんなくて、断ったのな」 「・・・・・・うん・・・」 「・・・・・・けど、なんか・・・・・・、・・・今、すげぇにキスしたい・・・」 「…!!?」 目玉が飛び出るんじゃないかというぐらい、あたしは目を大きく見開いてしまった。 「・・・え、と・・・よくわからないんだけど・・・?」 「・・・俺も、わかんねぇ」 ハハ、と笑う武。 そして、すっと武の顔があたしの顔によって来た。 唇どうしが触れ合うか触れ合わないかのところで、あたしはそっと目を閉じる。 触れた唇。 それが離れると、二人とも真っ赤な顔で、はにかむように笑った。 「・・・これが、好きっていうのなのかもな・・・」 武がポツリと言った。 ――ああ、確かに。 『すき』という言葉にすれば、あの心のもやもやとした気持ちにも納得がいく。 「・・・・・・そうかも・・・」 あたしもポツリと、そう言葉を発した。 07/05/26 せっかくなのでアプしてみました^^ 幼馴染と言う設定が大好きです〜!! |