俺は同じクラスのさんが好きだ。




最初は少し気にしていただけ。
ぼーっと窓の外を見ている彼女のことを、ただ漠然と「きれいだ」と思った。




それから俺は、ちらりとたまにだったけれど彼女の事を見るようになった。

誰かと話すときには必ず目を逸らさないでいるところとか、
廊下に落ちていた大きめな紙くずをさりげなく拾ってゴミ箱に捨ててるところとか・・・


そしたら、いつのまにか俺の心の中は彼女のことでいっぱいだった。








・・・一度だけ、さんとばっちりと目が合ったときは、
心臓が飛び出るんじゃないかと思った。


けど、それを彼女に悟られないように、俺は微笑んだ。
そしたら彼女は少し頬を赤らめて・・・そんな様子がまた俺の心を鷲掴みにする。




















* * 交 わ る 視 線


















今日のHRで行われる席替え。
俺はどうしても彼女の隣の席になりたかった。


・・・だから、ごめん、クラスの皆。

俺はクラス委員と仲の良い特権を利用させてもらい、彼女の隣の席を勝ち取った。




「・・・よろしく、さん」

早々と席の移動を完了させた彼女の隣に、俺も机ごと移動させる。
さんは、一瞬固まったかと思うと

「・・・よ、よろしく!じ、神君」

と、顔を赤くしながら、俺に、はにかんだような笑顔を向けた。











・・・こんな反応をされたら、自惚れてしまう。


俺は少し熱を持った顔を彼女に悟られないように肘を突き、手のひらでさりげなく顔を隠した。














彼女とせっかく隣の席になったんだ。

俺はその特権を最大限利用させてもらう。




そう思っていたんだけど、現実はなかなかそうはいってくれなかった。



休み時間になると俺の周りに寄ってくる人。

・・・人が寄ってきてくれることは嬉しかったんだけど、
俺としては彼女と少しでも話がしたかったから、少し・・・いや、かなり困った。


彼女はというと、休み時間になるとそそくさと彼女の友達の席に移動。








もっともっと彼女に近づきたいのに。








彼女に少しでも俺のことを考えてほしい、気にして欲しい。
俺はそんなことばかり考えていた。

・・・で、行動に移したことが、彼女をじっと見つめること。
少しでも、俺の思いが伝わればいい、そう思って。










そして、チャンスがめぐってきた。

そう、日直。
俺のクラスでは、隣の席の人とペアになって日直をする。

つまり、彼女と二人で。



黒板を消すとき、二人で並んで、他愛もない話をしたり、
先生の雑用も、俺にとっては日直の仕事が何もかも楽しかった。




最後の大仕事、日誌。
俺は彼女に少しでも近づきたくて、

「隣同士で書くよりも、その方が日誌を見やすいし、交代しながらも書けるから」

なんて適当な理由をつけて彼女を俺の向かいの席に座らせた。
手を伸ばせば届く距離に、俺はいつもより鼓動が早くなる。



さん、今日の古典の授業の感想は?」

ふいに、ペンを止め、さんに問いかけた。


「・・・え。・・・えーっと・・・」

彼女は俺の予想通り困惑した。
そんな姿が、とてもかわいらしくて、俺は噴出してしまった。

「ごめん、さん!ちょっとイジワルしちゃった」

「・・・い、いじわる・・・?」

「そう。さん、古典のとき、すごい気持ちよさそうに寝てたからさー」

「!!気づいてた!?」

「うん」

かあぁと赤くなる顔。
かわいいなぁ。



「かわいいなぁって思って見てた」

俺は正直な感想を述べると、彼女の顔はますます赤くなる。

「じ、神君・・・!」

「赤くなってる。かわいいなぁ」

すっと腕を伸ばすと、彼女のあたまを撫でた。
彼女の細い髪の毛が、俺の指の間をなめらかに通っていく。



彼女はうつむき、そして、

「じ、神君・・・あんまりからかわないでよ・・・」

何とか声を絞り出したようだった。






俺はもう、こらえ切れなくなった。


彼女の頭に載せていた手を彼女の頬へ移動させる。

「・・・からかってないよ。ずっとかわいいなって、見てた」

「・・・・・・え」

彼女は驚いて俺を見上げた。




「・・・ずっと、見てた。さんのこと」


彼女の瞳をまっすぐ見て、彼女に正直な気持ちを伝える。


さんだって、気づいてたでしょ?俺の熱い視線」

「・・・・・・き、気のせいなんじゃないかって思ってた・・・」

「気のせいじゃないよ」








あふれる思いは、自然と言葉になった。










「ねぇ、さん。・・・好きだよ。・・・俺と付き合って?」










彼女の返事を待たずに、俺は彼女の唇にそっと口付けた。








「・・・あの・・・」

ゆっくりと唇が離れた後、彼女は搾り出したように声をだした。

「何?」

俺は微笑みながら答えた。

「・・・まだ、返事もしてなかったんだけど・・・」

「嫌だった?」

そう問う俺に、彼女は首を横に振った。
そんな姿もたまらなく可愛くて・・・

さん」

「な・・・」

何?と、いい終わらないうちに、また彼女の唇をふさいだ。



薄く目を開けると、頬を赤らめている彼女の姿が目に入る。


それがまた色っぽくて、俺は知らないうちに頬が緩んでいた。













06/11/20
「視線の先に」の神視点でした!

あれ・・・実は真っ黒!な神を目指していたのに、全然別物に・・・!
思い通りに行ってくれない、そんな世の中。(何)