晴れて付き合うことになったあたしと三井。

一番初めに三井と付き合ってからはもう一ヶ月が過ぎた。











昼休み、いつものように屋上で、二人でお昼。


毎週水曜日はお弁当の日。

普通の恋する女の子なら、毎日作ったりするかもしれないけど、
あいにくあたしは料理が大の苦手で・・・

週1で勘弁してもらってる。




「・・・なあ、

「・・・な、なに・・・?」



あたしの作ったお弁当を食べながら、ふいに三井があたしを呼んだ。
お弁当、何かおかしな味でもしたのかと思って、あたしはドキリとしながら答える。







「・・・あのさ、そろそろ、俺のこと・・・名前で呼んでくんね?」

















Y o u r   N a m e















「・・・名前、ですか・・・」

「何で敬語なんだよ」

「あ、いや、・・・別に」



お弁当の文句でも言われるのかと思って、ちょっと拍子抜け。
そういえば、三井はあたしのこと名前で呼んでるもんな。



最初、三井に名前で呼ばれたときはかなり照れたな・・・

じっと三井の視線を感じて、あたしは少しだけたじろいだ。







「・・・ひ、ひさ・・・・・・無理だー!恥ずかしいし!!」


あたしは恥ずかしさが増してしまい、頭を抱え込んだ。


「・・・わけわかんねぇし!んな反応、こっちの方が恥ずかしいわ!」

赤くなるあたしにつられるように、三井の顔もほのかに赤みが増す。

「無理だよ!」

「ダメだ。絶対名前」

「ぬぅ・・・」

「少しずつでかまわねぇから」


三井は、優しくそう言った。
そしてそのまま、あたしの作ったちょっとこげた卵焼きをぱくりと口の中のいほおり込む。


「ん、んまい。おまえ、作るたびに腕上がってるくね?」

「ほんと!?」

あたしは三井の言葉に、思わず身を乗り出した。


「嘘言ってどーすんだよ」

はは、と笑いながら、三井は箸を置くと顔を上げる。


ぱっと視線が至近距離であって、あたしは思わず顔を逸らそうとした。
けれどもその前に三井が、あたしの頬に手をあてる。


そのまま、三井の顔がゆっくりと近づいてきた。






(うわぁぁああ!!)


あたしは心の中で叫びながら、ぎゅっと目を閉じた。
ドキドキと心臓がすごい音で鳴り響く。
屋上に人がいなくて本当に良かった。






くちゅっと、ほんの数秒だけ触れた唇。



あたしは、それが離れたのを確認すると、目を開けた。
けれど、三井の顔がまだあたしから数センチしか離れていなくて、心臓がまたドキリとなった。


「・・・・・・、真っ赤」

「・・・っるさい・・・三井だって赤いくせに」

「ひ・さ・し」

「・・・・・・ってか、ここ学校。いきなりこんなことしないでよ」

「・・・ひさし。」

「・・・ひ、ひさ・・・し」

「よし」


三井は満足げにニヤリと笑った。
あたしの顔がもっと真っ赤になったことは、言うまでもない。








「そもそもさ、何で三井はそんなにな・・・」

「寿。」

「・・・ひ、ひさし、は、名前呼びにこだわってるわけ?」

「・・・なんか他人行儀じゃね?」

「そーかなぁ・・・」

「そうなの。それに名前で呼び合ったほうが付き合ってるのアピれるじゃん?」

「はあ・・・?」

は俺のモンで、俺はのモンって言う一種の証、みたいな?」

「・・・・・・」

「・・・顔、赤っ」

「・・・うるさい・・・」


三井は、笑うと、また顔を近づけてきた。






















放課後。

あたしは三井と一緒に帰るために図書館で時間をつぶしていた。
ちなみに、いつも一緒に帰っているわけじゃなくて、あたしの気分。


部活中に三井の携帯に「今日、待ってるね」と一言メールをしておく。
すると、部活を終えた三井がそのメールを確認して、昇降口まで迎えに来てくれるっていう寸法だ。



今日の放課後も、そんなあたしの気分なわけです。

けど、今日は図書館が司書の先生の都合でいつもより早くに閉めることになった。
どうしようかちょっとだけ考えると、選択肢は自然と二つになる。



教室か体育館。


だけど、放課後の教室なんて怖いし、他に残ってる人がいたらちょっと気まずいから・・・
久しぶりに体育館に行って三井の練習風景でも見に行こう!












体育館の扉を開けると、もわんとした熱気がした。
あたしはなるべく三井たちの邪魔にならないようにそっと応援席に座った。

久しぶりに見たバスケをする三井。


やっぱりかっこいいなぁ。

あたしはバスケしてるときの三井の目が大好き。
こんな真剣な目をするのは、バスケしてるときだけだと思う。



食い入るように三井を見ていたら、練習もあっという間に終了。

あたしは軽くスキップをしながらバスケ部の部室へ向かった。













「はぁ・・・」

部室のドアをノックしようとした瞬間、大きな溜め息が聞こえた。
ほかならぬ、あたしの彼氏の溜め息だ。

「どうしたんすか?三井さん」



後輩の・・・確か、宮城くん、だったかな?
彼が、三井に声を掛ける。

なんとなくノックするタイミングを逃してしまったような気がして、
そのまま部室の声に耳を傾けた。



「いや、な。・・・彼女が名前を呼んでくんねぇわけだよ」

「?そんな悩むことですか?いずれ自然と呼んでくれますって」

「・・・実は、な・・・そろそろヤりてぇんだわ」

「はあ・・・?」

「・・・ヤるときはやっぱ名前呼んで欲しいじゃん?」

「なるほど!」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



んななななな・・・!!
なんて会話を・・・!!


「なるほど、じゃなーーい!!」

あたしは三井と宮城くんの会話をさえぎり、部室のドアを思いっきり開けた。


「な!?こ、!?」

「うあ!三井さんの彼女さん・・・!」


二人同時に驚きの声を上げる。








「〜〜っもう最低!!三井の名前なんて一生呼ばん!!」


















その後、あたしが三井をしばらくの間避けていたのは言うまでもない。


そして、あたしが三井の名前を呼ぶようになるのは、そのもう少しだけ先の話。







07/02/18
過去拍手お礼文でした。
うーん・・・これは実はかなりの不完全燃焼作、だったりします。
まとまってないなーっていうのを痛感。

やっぱり書くって難しい。