「あのさ、のこと、好きなんだけど」 伝 わ れ 、 キ ミ へ 「・・・はい?」 聞き返すまでの間、約5秒。 あたしはいま目の前に居るこの男、三井寿をただ唖然として見つめた。 場所は昼休みの図書室。 昼休みに図書室に居る生徒なんてほとんど居なくて、あたしはそこで図書当番の仕事をしていた。 そしたらめずらしくもクラスメイトの三井があらわれて、しばらく談笑をしていたら、この展開。 な、なんなんだろう。これ。 あたし絶対からかわれてるよね?? え、だって三井があたしを好きー? いやいやいや。ありえないありえない。 だって、あたしは三井に好かれるようなこと何もしてないし、 何より、普段のあたしを小ばかにしているような三井の態度はどう考えてもあたしを女としてみてないでしょ。 「いや、だからが好きで、俺と付き合って欲しいと思って」 さらりとあたしの問い(って言うのだろうか)に答える三井。 その表情は照れるわけでもなく、いたっていつも通り。 あ、これはやっぱりからかわれてるんだな。 何だよ。あたし、ちょっと動揺しちゃったじゃん! 三井の癖にムカつくから、ここはちょっと乗ってやろう。 「うん、いいよ」 あたしも三井に負けないくらいいつも通りに返事をした。 まるで、「そこのシャーペン取ってくれない?」と言われた友達に軽く返事をするように。 「ほ、ほんとか!!」 あたしの返事に三井はパッと子供みたいに顔を輝かせた。 ・・・・・・あれ。 ・・・ちょっと違和感を感じたけれど、そこは気にしないことにして、 あたしは「ほ、ほんとか!!」という三井の問いには答えず、 「んじゃ、あたし職員室に用事あるから行くね」と、片手を上げて挨拶して、足早に歩き出す。 「あ、おい!!今日部活終わるまで待ってろよ!!」 図書室のドアを閉める間際に聞こえた三井の声。 あたしはもう一度片手を上げると、職員室へ向かった。 放課後。 一応約束しちゃったし、あたしは律儀にも教室で三井の部活終了を待っていた。 「!悪ぃ、自主練に夢中なっちまって」 あたしはうとうととなりかけていた目を擦りながら時計を見た。 「うわっ。もうこんな時間・・・!三井、遅いよー」 「だから悪ぃっつってんだろ。家まで送ってやっから」 「今度ジュースおごりね〜」 あたしは大きく伸びをしながら立ち上がった。 と、あたしの目の前に出された三井の大きな手。 「ん?」 首を傾げるあたしに、三井は顔を赤くしながら「・・・手」と、小さな声で言った。 ・・・あれだよね、手を繋いで帰るってことだよね。 なんだか、これって本当に――・・・ 「・・・付き合ってるみたいだね」 ぽつりと言うと、三井は訝しげにあたしを見た。 「・・・付き合ってるんだろーが」 「ええっ!?」 「は?なに驚いてんだよ?」 「あ、いや、うん。なんでもない」 言いながらあたしは、三井の左手に自分の右手を重ねた。 今まで、なんてことなかった心臓が、急にドキドキし始めた。 あたしってば、三井にひどいことした!! っていうのかしてるのか!? だ、だって本気だなんて思ってなかったんだけど・・・ そういえば、図書室で話をしていたとき、ちょっと様子が変だなって思ってたけど。 放課後待ってろだとか、ああそういえばあたしが返事した後すごく嬉しそうだったし、 「なんだよ、ぜってぇだまされると思ったのに〜」とか言うのなかったし・・・ 何より、さっきの表情。 三井は本気であたしのことを好きなんだろうか。 だとしたら、あたしはどうしたらいいんだろう。 だって、三井のことは確かに好きだけど、今まで恋愛対象というよりはむしろいい友達って感じだったから。 ・・・そんなことを考えながら歩く帰り道。 右手には三井のぬくもり。 何度か三井が話しかけてきたんだけれど、あたしは上の空で返事をしていた。 「お前んち、ココなんだろ」 「へっ!?」 しばらく沈黙が続いていたのを三井が破った。 パッと顔を上げると、見慣れた我が家。 色々と考えているうちについたようだ。 「あ、うん、家だ。うん、ありがとう」 じゃ、と、左手を挙げてくるりと玄関の方を向こうとした瞬間。 まだ繋がれたままだった右手を三井がぐいと引き寄せた。 「わひゃ!」 我ながら可愛さのかけらもない小さな叫び声を挙げると、あたしはすっぽりと三井の腕の中。 「み、三井・・・?」 三井は何も言わない。 でも、あたしの顔は丁度三井の胸の位置で、彼の心臓がすごい速さで鳴っているのが伝わってきた。 その音を聴くと、あたしはますます罪悪感でいっぱいになった。 すっと三井の腕の力が弱まった。 あれ?と思い、三井を見上げると、三井の右手があたしの左の頬に添えられた。 そのまま、三井の顔がどんどん近くなって―― 「ちょ、ちょっと待った!!」 あたしは両手を前に出し、三井がしようとしていたことを何とか阻止していた。 「・・・何だよ・・・」 じゃっかん、怒っているようにさえ感じる三井のオーラ。 でもそれは、照れているだけなんだということはすぐにわかる。 「・・・こ、ここ、あたしの家の前だよ?親とか近所の人とかに見られるかも・・・」 「・・・ちっ。わかったよ」 あたしは何とかごまかすことに成功すると、三井にわからないように小さな安堵の息をついた。 「んじゃ、明日な」 三井は、そういうと、くるりと方向を変え、歩き出した。 「ば、バイバイ!」 数歩歩き出した三井に、あたしはとっさにあいさつをした。 すると、三井はもう一度こちらを見て 「おう」 と、今まで見たことのないような笑顔をあたしに向けた。 ・・・きっと、月明かりのせいだよね。 あたしはドキドキとうるさい心臓をどうにか抑えようと、胸の前でぎゅっとこぶしを握った。 06/08/11 めずらしくノンストップで書けたお話でした。 一応、3話完結予定です!お付き合いくださいませv |