「三井、ほいっ」 ポンと投げられたそれをキャッチすると、俺は首を傾げた。 「・・・なんだ、コレ?」 とても軽い、手のひらに収まるほどの箱。 「・・・何って、今日は何の日でしょう?」 「・・・ああ。バレンタインね」
い つ も と 違 う 君 を 知 っ た 日
今日は朝から女子がキャーキャー騒いでたし、男子もどこかそわそわしていた。 そういえば、俺もいくつかチョコを貰った。 もう三年になればこの時期、自由登校ってヤツだ。 それでも、今、人が教室にあふれているのは、今日が中間登校日だからだ。 バレンタインを中間登校日とかぶせたのは、学校の何かのたくらみなんじゃねぇか? ・・・ま、俺には関係ねぇか。 「あ、ちなみに義理ね、義理」 「・・・こんだけ小せぇなら誰でも義理ってわかるっつの」 「いや、だって三井バカでしょ?勘違いされたら困るなーって」 「・・・・・・・・・っのアマ・・・!」 この女、は、俺のクラスメイトだ。 放課後にちょっくら部活の様子でも見に行くかと思い、 ホームルームが終わってさっさと体育館に行こうとしたら、コイツに呼び止められた。 チョコをくれるだなんて可愛いとこあるじゃ・・・ 「ちなみに、ホワイトデーは最低三倍返しだからね。それ、二百円」 「・・・・・・」 ・・・前言撤回。 いちいち気に障るヤツだなぁオイ・・・ 「んじゃ、バイバーイ」 は、そう言うと、スタスタと去っていった。 俺は大きく溜め息つくと、気を取り直して、体育館へと向かう。 部活が終わり、いい汗をかいた。 バレンタインとあって、部員たちとチョコの話も少しした。 バスケ部の連中はほとんどが彼女のいねぇ淋しいヤツだから、なかなか盛り上がった。 久しぶりの部活もやっぱ楽しかった。 俺は満足げに着替えをしていた。 どれ帰るかと思い、カバンの中に色々詰め込んでいたら、ふと忘れ物に気づいた。 ・・・まだ進学先の決まっていない俺は、がり勉の生活を送っている。 今日だって休み時間の合間を使ってひたすら勉強。 クラスメイトたちに散々気味悪がられたが、今はそんなことを言っている状況ではない。 そんな俺の今現在の相棒ー要するに勉強道具ーを教室に忘れてしまった。 自分のバカさにちょっとうんざりしつつ、俺は後輩たちに挨拶をすると教室へ戻った。 「うぉー・・・暗ぇー・・・」 この時間になると、三年生で残ってるヤツはまずいない。 俺は真っ暗になった教室の電気をパチッとつける。 (参考書はー・・・) ガサガサと机の中を漁っていると、ふいに「グスッ」と鼻をすする音が聞こえた。 「!うわっ!!」 ふと、音の下方向へ目を向けると、 そこには、机の椅子の上に体を小さく丸めて、体育座りをしているがいた。 (椅子の上に体育座りできるなんて、どんだけちいせぇんだよ) 「おい、お前、どーしたんだよ?」 いつものように何か癇に障るような何かを言い出すだろうと、声を掛けた。 けれども、は何も言い返してこない。 「・・・何黙ってんだよ、気持ち悪ぃな・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 そう言っても、の返事はなかった。 この体制のまま寝てるとか器用なことしてんじゃねぇかとも思ったが、 震える肩を見れば、どうやらそうではないらしいことがすぐにわかる。 「・・・・・・・・・」 少し、声のトーンを落として、もう一度を呼びかける。 「・・・っさいなぁ!!」 するとは、急に声を上げた。 そして、俺が何かを言う前に、間を挟まず 「・・・あたし、のこ、とな・・・て・・・ほっとい、て・・・」 と、言った。 いつものから想像もできないほど、弱々しい声だった。 「・・・っはー・・・そうかよ。んじゃ、俺は帰るからな」 俺は溜め息ひとつつくと、教室のドアに手をかける。 は一向に顔を上げようとしない。 「・・・っ三井の、アホー・・・」 しばらくして、俺が帰ったのだと思ったのだろう。 がポツリと言った。 「・・・だーれがアホだって?」 「!!」 俺は、再びの傍まで歩いた。 「・・・泣いてるヤツほっとくほど冷たくねぇぞ、俺は」 が座っている席の隣の席の椅子を引っ張り出すと、 のそばに腰を下ろし、頭をポンポンと撫でてやった。 そうしたら、は「ううっ」と、声を出して泣き始めた。 途中からは嗚咽もまざってきた。 が泣いている間中、俺はの頭を撫でてやった。 ・・・柄じゃねぇ・・・けど、 いっつも色々言ってくるに元気がねぇと、どうも調子が狂う。 は、涙が収まってくると、少しずつ話し始めた。 バレンタインに気合を入れて手作りのチョコを作って、 好きだった人に告白をしたら、見事に振られたらしい。 「ついでに言うと、三井のチョコ、二百円っていうの嘘ね」 本当は百円しないんだ、なんてことも言いやがった。 (コノヤロウ・・・!) ちょっと殴ってやろうかと思ったが、 の次の言葉に、俺は手を止めてしまった。 「・・・あたし、ほんとに、好きだったんだー・・・」 相変わらず顔を膝に埋めているからの表情は見えなかった。 けれども、この弱々しく痛々しい声に、どんな顔をしてるかなんて安易に想像できる。 「うー・・・三井に慰められるなんて不覚だし・・・」 「・・・バーカ」 そんなこと言ってる余裕なんてないくせに。 「・・・ほんと、あたしバカだよね・・・」 は、「でも、」と続けた。 「三井、ありがと、ね・・・」 もしかしたら、はじめてきいたかもしれないの『ありがとう』 「お、おう・・・」 が下を向いていてくれてよかった。 ・・・多分、今、俺の顔、赤いし・・・。 ・・・こんなに素直ななんてはじめて見たから、少し動揺してるだけだ。 しばらくして顔を上げたの顔は、そりゃあヒドイもんだったけど、 そんな顔すら可愛いと一瞬感じてしまったのも、 きっといつもと知らないの姿のせいだ。 俺は、泣きすぎてちょっと疲れすら感じているが心配だったから、 を家まで送っていってやった。 ついでに、来月のホワイトデーは、六百円でお返ししてやろうって、考えながら。 07/02/15 1日遅れのバレンタイン! 皆様はいかが過ごしたでしょうか?私は見事なまでの引きこもr(ry 三井は、なんだかんだいってやさしいんだろうなーなんて妄想作品でした。 |