夏、あんなに青々と茂っていた木々たちも赤や黄色に染まり、
風も心なしか冷たく感じるようになってきた。


いよいよ迫る、受験シーズン。
あたしは平日は友達と図書館で、休日は自宅で楓と、勉強漬けの日々に突入した。
(ちなみに休日はほとんど楓に教えて終わる)


























S e a s o n   




























あたしと幼馴染の流川楓は、この中学の二年間、そんなに仲良くはなかった。
いや、むしろ疎遠になっていたと言った方がいい。


それが、最近は何故か楓があたしの帰りを待っていてくれて
一緒に帰っていたりするから、ほとんど毎日一緒にいるような気がする。


そのおかげかどうかはわからないけれど、
以前楓と話すたびに感じていた気まずさがなくなった。
・・・昔に戻ったみたいで、あたしはとても嬉しいんだけど。




いったいどうしたんだろう。














「ちょっと、ちゃん!」


それを不思議がったのは、どうやらあたしだけではないらしい。

あたしは昼休みになるなり、クラスの女の子たちに囲まれた。
この季節になってしまえば、クラスの子がどんな子なのかは大体わかってくる。
この子達も、別に嫌な子ではないって言うのがわかってる。

けれど、同時に何を聞こうとしているのかもわかってしまい、
あたしはほんの少しだけ間をおいてから返事をした。



「・・・なぁに?」

あたしが返事をすると、間髪いれずにクラスメイトの質問攻め。

「昨日一緒に帰ってるところ見ちゃったんだけど!!」

ちゃん、流川君と付き合ってるの!?」

ほか、色々きこえてきた。
けど、あいにくあたしは聖徳太子じゃないから聞き取れなかった。



「・・・あたしが聞きたいよー・・・」


苦笑しながら言うと、あたしを囲んでいるこのうちの一人が、ハッとした。
そして、

「・・・流川くん、もしかしてちゃんのこと好きだとか・・・!?」

と言った。
次の瞬間、わっとなるあたしの周り。




あたしは驚きのあまり目をパチパチとさせることしかできない。







か、考えたことがなかった。

楓があたしのことをどう思っているかなんて。





でも、もしそうだとしたら、全て納得いく。


いやいや待て。
楓があたしなんかを好きになるか?

楓は幼馴染のあたしから見ても文句なしにカッコイイと思う。
だから、可愛い子なんか何もしなくても寄ってくるだろう。
・・・ううん。それ以前に楓がバスケ以外に興味を持つのだろうか。
・・・・・・持たないよ、きっと。











ごちゃごちゃになる頭の中。





















ごちゃごちゃのまま、あたしは帰り道を歩く。
隣には、当たり前のように楓がいる。





「・・・どーした?」


あたしがあまりにもうんうんと唸っていたのを流石の楓も不審がったようだ。


・・・ここは楓にきいてしまった方がいいのかもしれない。
けれども、彼女たちの勝手な思い込みに過ぎないという思いのほうが強い。
直球できくのは、避けよう。



遠回しに、遠回しに・・・・・・



「・・・最近さ、楓は何であたしと一緒に帰りたがるの?」


あたしなりに、精一杯の遠回しできいてみた。


「・・・・・・?」

楓は顔をしかめて首を傾げるだけ。
何となくその空気が嫌で、あたしは視線を前にしてわざと大きな声で笑った。


「あはは!いきなりゴメン!」

顔が少しだけ赤くなるのがわかる。


「な、何か友達が、楓があたしのこと好きなんじゃないかとか言うからさー」





「ほんと、ありえないよね!」と、視線を楓の方に戻す。



「・・・・・・・・・・・・」





あ、あれ・・・。
なんだか・・・おこっていらっしゃいます・・・?



「・・・・・・楓・・・?」

・・・ありえなさすぎるけどさ・・・何も怒らなくてもいいんじゃない?
楓のことが好きなあたしにとっては、ちょっと傷つく反応だ。






ほんの少しの沈黙の後、楓は大きな大きな溜め息をついた。


「・・・マジありえねぇ・・・」

ボソリ、と言葉を発した楓。
ガンと鈍器で殴られたような気がした。

いくらなんでも、そんなに言わなくても。
あ。やばい、泣きそうだ。




何とかしなきゃ、と、両手を顔に持っていこうとした瞬間。

右側にいた楓が、ぐいっとあたしの右手を引っ張った。


「え、ちょ!」

突然のことに、あたしはバランスを崩した。

けれども、楓の力で倒れることはなく、よろけるだけで済んだ。










そして、次の瞬間。














「・・・っ!」



目の前には、綺麗な顔。
唇に感じる、生暖かい感触。


(・・・ちょ、なんで??どうなってるの??)

あたしは何が起こっているのかわからず、
空いている方の手で楓の胸をドンドンとたたく。

だんだんと息苦しくなり、酸素がほしくなって口を開けようとすると、
それを待っていたかのように楓の舌があたしの口の中に進入してきた。

(・・・!!??)


初めての感触に、ますます混乱するあたし。






やっと唇が離れたころには、あたしは肩で息をしていた。
楓はそんなあたしの様子に構いもせず、
あたしの右手を掴んでいた手を離すと、今度はその手をあたしの背中にまわした。

ぎゅう、と、力いっぱい抱き締められる。


「か、楓っ・・・!?」

あたしが驚きの声を出すと、楓はまた大きな溜め息をつく。



「・・・マジありえねぇ」

そして、先ほどと同じセリフを吐く。
何がありえないのか、あたしにはもはや理解不能だ。

「な、なに・・・!?」

ドキドキとありえないぐらい高鳴っている心臓。
あたしは目を見開くしかない。


楓はあたしの耳に唇を寄せると、軽く口付けた。
ビクッと強張るあたしの体。



楓はそのままあたしの耳元で、








「・・・好きだからに決まってんだろうが。気付け、どあほう」











と、呟いた。



「・・・・・・・・・はい・・・?」

あたしは少しすると、間抜けな声を出した。
溜め息をついた楓の息が耳にかかり、またビクッとなる。



が好きだっつってんだ」



はっきりとそう言った楓に、あたしはフルフルと小さく首を横に振る。

「あ、ありえないよ、あたし、かわいくないし、性格悪いし」


小さく震えた声でそう言うと、楓は「知ってる」と言った。
そんなはっきり言われても・・・・・・傷つく。




「・・・それでも、がいい」


けれども、その楓の言葉に、あたしは嬉しくて・・・涙が頬を伝った。


「・・・あたしも、すき・・・」

グズグズと鼻をすすりながら、ほとんど声にならないような掠れた声であたしが言うと、
楓は、抱き締めていた腕を解き、あたしの涙の後をたどるように舐める。



「泣くな」

「・・・楓が泣かせたんでしょー・・・」












結局あたしは家に着くまで泣き止むことはなかった。
けれども、繋がれた手があたたかくて、楓と気持ちが同じであることが嬉しくて、



心の中は、世界中の人に優しくできそうなほど、あたたかだった。










そんな、受験シーズンを控えた、秋の日の出来事。












07/05/12
お待たせしました!待ってる人がいるか微妙な、続き物第三弾!
4部作目でくっつける予定が、予想外にも両想いになっちゃいました・・・!

そんなわけで、最後の冬は、イチャイチャしてるのを書きたいと思います!
またまったり書いていきますので、長い目で応援してくださると嬉しいです・・・!